REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©NaG∀T∴

Mov.69 彼岸から(3)

 

 ……であわなければよかったんだ……

 

 ……オレさえいなければ、おまえはあんなめにあわなかった……いろんなヤツがひどいめにあうことも……オレはクズだ……どうしようもないクソゴミなんだ……

 

 ……やめろよ……じぶんでよくわかってるんだから……こころにもないこというなよ……

 

 ……どうしてだよ……どうしてそんなにやさしくするんだよ、オレなんかに……

 

 意識を揺り戻され、シンは微かに上がったまぶたの隙間から闇の波濤はとうをうつろに映した。投げ出された四肢や頭に当たる岩の感じから仰向けの体は窪みに引っかかっているようで、存在の重みで減速した流動に引きずられて頭側から少しずつ流れ下っている。溶岩流が薄いバリア越しに背中をゴリゴリこするたび、岩肌にめり込みそうなほど重い全身が激痛でひび割れたが、闘いで負った傷の痛みはなぜかそこに混じっていなかった。

 

(……オレは、スペシャル・スキルをぶっぱなして……あいつが、ふたつのこぶしで……)

 

 だんだんとまぶたが上がったシンは、いつになく広く、明瞭に見えることに気付き、滅びの痛みで半ば麻痺した右手をぎこちなく顔へ動かした。

 

(……デスマスクが……)

 

 肌に伝わる、ごつごつした指と手の平の感触……傷だらけの赤い仮面は、もうそこには無かった。

 脳裏をよぎったジュリアが狂気にひびを入れ、ファイナル・デストロイ・ブーケを打ち破った二重のブレイキング・ソウルが砕き散らして――

 仰向けに倒れ、流れながら意識を失っていくときユキトにギガポーションをかけられたことを思い出したシンは流動に揺られながら息を吸い、それが胸に深く染み込んでいくのを感じた。

 

「……いきろってのか、オレに……」

 

 不意に涙があふれ、闇をぼやけさせて目尻から流れ落ちる。シンは震えながら空へ伸ばした両手を顔の上で重ね、愛しい少女の名を抱き締めるように呼んだ。