REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©NaG∀T∴

Mov.62 カタストロフィ(1)

 ――しっ、城の最上階が爆発したッ!――

 ――矢萩のアイコンが消えたぞ!――

 ――やったのかっ? 先行した斯波たちが?――

 

 矢萩が集中砲火でちりになる十数分前――押し寄せた同盟軍メンバーは半壊して煙を上げるヤマト王城最上階をやぐら門手前から見上げてどよめき、矢萩が倒れたものと解釈して歓喜した。興奮に沸くガーディアン100名強とともに南西側から見上げる北倉ロベルトも汗だくのマッチョな顔を上気させ、グレーの半指レザーグローブをはめた左手の平で額をこすりながらマップに視線を転じて目を皿にした。

 

「……ステルスにした可能性はあるがッ、やったに違いないッッ!」

 

 ガーディアンズを振り返り、北倉は分厚い鋼の右こぶしを挙げた。

 

「――倒したんだッッ! 矢萩をッッッ!」

 

 オオッと歓声を上げ、健闘をたたえ合うツインテールヘルメットの面々……彼等を見回した北倉は暗雲を吹き流す北東の風を受けながら上下レザーの巨体の向きを変え、同盟軍を構成している他勢力をギロッとうかがって鼻孔膨らむ鼻から熱気を漏らした。

 門扉が破壊されたやぐら門前の、各勢力から集められて編成されたオートマトン部隊……その後方、後藤率いる白軍服の元ヤマト軍部隊……その30メートルほど東に阿須見やミリセントらが属するハーモニー部隊……そして、コリア・トンジョクのパジチョゴリ姿が他よりやや突出して城の南東側――北倉たちからは2時の方向、直線距離でおよそ150メートル離れたところに見え、赤基調の韓服姿の先頭に立つクォンの紫カラーが目立っている。どの勢力も半ば崩れた最上階を見ては仲間たちと喜び合っていて、北倉たち神聖ルルりんキングダム勢に注意を向けてはいなかった。

 

「いよいよだなッ……!」

 

 コネクトを開く北倉……ハイパーゴッデス号車内にいるルルフと鎌田のバストアップが上下二分割された画面にそれぞれ表示される。彼女たちは捕虜の監視を買って出て、コンコルディ遺跡の外に僅かな手勢と残っていた。

 

「ハイパーディバインッッ! ゴッデス・ルルフ様ッッ!」

 

 右肘を曲げ、メガ・ナックル・ガントレットをはめた右手を左胸の紋章のワッペン前に挙げて敬礼すると、銀のクラウンを頂くツインテールの女神は白いレーストリムグローブをはめた右手を軽く上げて応じ、黒チョーカーから下がる太陽の飾りを左手の人差指と親指でいじりながら、にやあっとよこしまな微笑を浮かべた。

 

『ロベー、ヤマトは倒れたんだね?』

「はいッ! まだ確定ではありませんがッ、城の最上階が半分近く吹っ飛んで矢萩の反応は消えましたッ! 我々の勝利に間違いないでしょうッッ!」

『では、――』

 

 金のひだ襟で首を飾る鎌田がジト目を細め、狡猾に光らせる。

 

『――計画通りに……よろしくお願いします、北倉さん』

「了解したッ!――それではゴッデス・ルルフ様ッッ!」

『期待してるよ、ロベー』ふっと微笑に混じる苦み。『……シャイロック金融を黙らせるには、ポイントがいるんだからね』

「はいッッ! お任せ下さいッッ!」

 

 コネクトを終えて手勢に向き直り、鋼の右巨腕をスッと上げる……と、喜びで緩んでいたガーディアンズの顔に血潮が再び満ち、集団から複数名がサッと進み出て北倉の前で2列横隊になった。一見しただけで選りすぐりと分かる精悍な20名――精鋭たちは、イジゲンポケットからガスマスクを出して鼻と口を覆い、片足ずつ上げてインラインスケートをパッと装備すると、それぞれの得物や銃器を強く握って胸に引き寄せた。

 

「……よしッ!」

 

 自らもガスマスクとインラインスケート、左手にもメガ・ナックル・ガントレットを装備した北倉は遠目にコリア・トンジョク勢をにらみ、闘牛さながらに右足の車輪でコンクリート舗装の地面を二、三度蹴って、固めた鋼の両こぶしをスタンバイさせた。

 

「――まずは俺たち先駆けが冒涜者どもを叩くッッ! 『神』に何度も歯向かった報いを受けさせてやるんだッッ!――行くぞォッッッ!」

 

 くぐもった声で号令をかけ、ゴオッと飛び出した北倉に続く精鋭たち――鬼門から吹く風に逆らう彼等は元ヤマト軍部隊とハーモニー部隊の後方を素早く滑り抜け、油断しているパジチョゴリ軍団に背後から奇襲をかけた――