REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.47 よみがえる悪夢(4)

「……お前は、あのとき……」

 

 抜き身の羅神片手にATVから降り、佐伯は流動に袖や裾を揺らされながら間合いぎりぎりに立つ少女を凝視した。くしゃくしゃのピンク髪、まだ未成熟であどけない体を飾る花柄の半袖チュニックTシャツ、ハーフパンツから出てエジプトサンダルに素足を収めるおてんばそうな脚……切なげに瞳を潤ませるジュリアは、しかし目の前でラー・ハブヘッドに食われ、キャラクター・アイコンも消えたはず。これは、おそらくこの霧による幻覚――敵の攻撃に違いないと踏んだ佐伯は、亡き少女の姿を借りた幻に激しい憎悪をかき立てられた。

 

「……消えろ……!」

 

 赤い切っ先を花咲く胸に向けると、少女はあふれんばかりの涙で瞳をぐずぐずにし、心底悲しげに問いかけた。

 

「……シューくん、なんでこないなことしてるん?」

「何?」

「キライなひとたちをやっつけようと、せんそーまでして……どうしてなん?」

「秩序のために決まっているだろう」

 

 幻だと分かっていながら、佐伯は言い聞かせるように答えた。

 

「――好き勝手を許していたら社会は混乱し、結果多くの人間が不幸になる。あの事件……お前たちが命を落とした一件もそうだ。もっと厳格なコミュニティ運営をしていたなら、あんなことにはならなかったはずだ……!」

「……シューくん、うちらのことでかなしんでるんやね……けど、こないなことしてたら、みんなふこうになるだけや。うち、そんなのイヤやわ……」

「……黙れ」

 

 佐伯は羅神の柄を両手でグッと握り、上段に振り上げてにらみつけた。

 

「――消えろ。でなければ、斬る……!」

「すきにしたらええよ。そのかわり、せんそーはやめてや。みんなでしあわせになれるようにかんがえてよ」

「……こんな、姑息な揺さぶりが通じると思っているのか……!」

「うちは、うちのきもちをゆーてるだけや。シューくんだって、うちのゆーてることホンマはわかってるくせに」

「分かるものか……!」

「ごまかしてもダメや。だって、うちはシューくんのなかのうちやもん。シューくん、うちのことでムキになりすぎてるんよ」

「――ほざくなッ! 幻の分際でッッ!」

 

 眉間に亀裂の稲妻が走り、踏み込んだ佐伯から縦一文字の赤い閃光がくしゃくしゃピンク頭へと――