REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©NaG∀T∴

Mov.37 未明の離脱(3)

 

「ふん、佐伯が暫定リーダーか……」

 

 高級ぶった黒革ソファにもたれてグラスを傾け、キム・ジュクはストレート・ウイスキーの焼けるような濃厚さを味わいながら鼻で笑った。赤瓦台のリビングダイニング――コの字型に置かれたソファには、キムの他にチュ・スオとオ・ムミョンがグラス片手にふんぞり返って同じように委員会からのメッセージを見ており、酒のつまみが並ぶ黒いローテーブルの向こうでは、貧相な白色パジチョゴリ姿のクォンがフローリング床に四つん這いになっていた。

 

「新田のヤツ、とうとう引きずり下ろされたっスね」

「デュフゥ~」

 

 オが気持ち悪く笑い、カルーア・ミルクをズズッと一口すすって唇をなめる。

 

「――あいつ、ディテオを探す仲間を勝手に募集し始めたよね。まずいよなあ。デュフフゥ」

「ふふん、仲間割れならじゃんじゃんやってくれ。それだけ面白くなるってもんだ。――そうだろ、クソ犬?」

「はい。――ブッ!」

 

 投げつけられた氷が鼻頭に当たり、薄笑いにひびを入れて床へ落ちる。

 

「お前……」

 

 にらみつけたキムは氷が入ったアイスペールから右手を戻し、チェイサーをグイッと飲んでから怒鳴った。

 

「――畜生の分際で人間様の言葉をしゃべるんじゃねえ! 犬はワンワンだろうが!」

「ワ、ワン」

「デュフゥ! 何だ、その返事は? もっとちゃんとしろ!」

 

 オがテーブルの皿から取った唐揚げを、チュがチヂミを投げつける。頭や顔にボッ、ビチッとぶつけられるクォンは、ただ媚びた笑みを浮かべ続けていた。

 

「おいおい、お前ら、食べ物を粗末にするんじゃない。それに床が汚れるだろうが。――おいクソ犬、さっさと掃除しろ。ちゃんとなめてキレイにするんだぞ」

「ワン」

 

 頭を下げて落ちた物を食べ、フローリング床をペロペロなめる無様をキムたちは嘲笑い、それぞれ水割りやカクテルを飲み、フードをつまんだ。

 

「これで、きれいな女どもでもいれば、言うこと無しなんスけどねぇ」

「デュフゥン。うちに大した女はいないしなあ。ファン・ヨンミもいまいちだし」

「もう少しの辛抱だ。ハーモニーが乱れれば、必ずチャンスが来る。俺たちが天下を取れば、女も選り取り見取り……そう、あのクソアマにも思い知らせてやらないとな……!」

「あいつ――加賀美潤とかってガキっスね?」

「そうよ」キムの両目が、獣性でぎらつく。「あの生意気なメス、さ……!――クソ犬! そういうことだから、そのときが来たら、お前にも存分に働いてもらうぞ!」

「分かったのか? このクソ犬ッ!」

「デュフフ、返事は? 返事~? デュフフン」

「ワンッ!」

 

 威勢のいい鳴き声に、キムたちはゲラゲラ笑ってさかずきを重ねた。