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REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.35 アップデート(5)

TEM†PEST

「……アップデート?」

 

 手錠の鎖をカチャカチャ鳴らして寝ぼけまなこをこすり、ユキトはベッド上から暗闇に浮かぶ光球を見上げた。

 

『そうです、斯波ユキト』

 

 いきなり部屋に現れて叩き起したことを悪びれる様子も無く、ワンは淡々ときらめいた。

 

『――封印の手錠をはめられているあなたは、他の方々のように通知メッセージをご覧になれません。ですから、お知らせしようとお邪魔したのです』

「……それで、アップデートで何がどう変わったんだよ?」

『〈黒の十字架〉が、追加されました』

「黒の十字架?」

『はい。黒の十字架には、このゾーンのシステムを変える力があります』

「……それって……」

 

 双眸がハッと見開かれ、光を映しながら凝視する。

 

『黒の十字架を取得してその力を行使すれば、このゾーンから出られるように変えることも可能です』

「……出られる……ここから……!」

 

 ユキトは掛け布団の上で両手を握り締め、最近腫瘍のように膨れ始めた右こぶしを見た。

 

「――この世界からジャンプできれば、デモン・カーズからも解放される……! 死ななくて済むんだ……!――おい、それはどうやったら手に入るんだ?」

『最強モンスター〈ディテオ〉を倒すと、ドロップします。ディテオは、赤い星を目指して進んだ先にいます』

「赤い星?」

『外に出てお確かめ下さい』

 

 ユキトはベッドから飛び、玄関から外に走り出た。すると、詰所の前に立っていた警備隊員たちと目が合う。星を見るため外にいるのだと察して彼等の視線の先――西に目をやると、まだらに浮かぶ雲の間に赤々とした輝きが見えた。

 

「……あれが……あれを目印にして進んだ先に最強モンスターがいて、そいつを倒して手に入る黒の十字架を使えば、望みをかなえられるのか……!」

『その通りです』頭上できらめくワン。『敵に先を越されないよう、ご注意下さい』

「えっ?」

『黒の十字架の力は、限りなく神に近い力。手にした者は、このゾーンのシステムのみならず、ここに存在するものすべてをコントロールできます』

 

 見上げた動揺を黄金の光で刺し、ワンは付け加えた。

 

『――黒の十字架を手にできるのは、ただお一人。ご武運をお祈り致します』