REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.35 アップデート(2)

「――こ、こいつらが、コンサートを中止しろと言うんですッッ!」

「貴様らは、公序良俗こうじょりょうぞくに反しているッ!」

 

 三人衆と警備隊員の前で矢萩は居丈高に怒鳴り、口の前に持って来た拡声器でルルフめがけて響かせた。

 

『――ショップでの購入額でランク付けし、競争をあおってポイントをつぎ込ませていることが、借ポイント地獄や脱税の原因になっている! そのような活動を、委員会は認めないッ!』

「……あ~ うるさいな~」

 

 両耳から指を抜いたルルフは拡声器を下ろした矢萩に微笑みかけ、ピンヒールを履いた足で間合いに踏み込んだ。

 

「――ひどい言いがかりですよ、それ~ ルルはみんなの幸せのために活動しているんです。分かってくれますよね~?」

 

 ツインテールを揺らして近付き、猫撫で声を出して見つめるルルフ。甘い瞳にロックオンされた矢萩は崩れそうになるのをこらえてあごを引き、再び口の前に上げた拡声器で隔てた。

 

『このイジンめ! 盾突くつもりかッ!』

「やめろォッッ!」

 

 耳を塞いで下がったルルフをかばい、北倉が前に出る。

 

「――因縁付けやがってッッ! 何か証拠でもあるのかッッッ?」

「そ、そうですよッ! 横暴ですよ、これは!」

 

 鎌田の憤りに周りのルルラーが加勢し、矢萩たちをワーワー非難する。四方八方からの集中砲火を矢萩はふんと鼻で笑い、振り返って1人の警備隊員をぞんざいに前へ呼んだ。

 

「――こいつが証人だよ」

 

 矢萩の横に立った南アジア系少年に鎌田たちの目が尖り、ルルフの黒まつ毛が冷ややかに反る。黒い隊服を着ていて一瞬見違えたが、それは紛れもなくジョアン・シャルマだった。

 

「……あら、久しぶりね~ どうしたの、そのカッコ?」

 

 きらきらっと送られたスマイルから硬い顔をそらすジョアンに代わり、腕組みした矢萩が「こいつは、警備隊の一員になったんだ」と面白くなさそうに返す。

 

「――イジンでも、有能な者は認めるというのが佐伯隊長のお考えだ。こいつはお前らを罰するため、我々に協力を申し出た殊勝なヤツでもあるしな」

「……どういうことだッ、ジョアンッッ?」

「ボクらへの逆恨みか? 何て恥知らずな――」

「Shut upッ!」

 

 ジョアンは北倉と鎌田をにらみ返し、ルルフを指差して叫んだ。

 

「――ル――こ、こいつは、ポイントを絞り取ることしか考えていない! ファンがcrimeに手を染めようがどうなろうが、構いやしないんだッ!」

「……ひ、ひっど~い! ひどいよ! ハイパーひど過ぎ! えーん!」

 

 ルルフが泣き真似をすると、北倉たち、そして200名近いルルラーが、瞬間沸騰した真っ赤な顔でジョアンにギャーギャー罵詈雑言の炎を噴く。

 

『ええいっ、黙れ、黙れッ!』

 

 拡声器が矢萩の声を響かせるも、まるで戦場のど真ん中のように荒れ狂い続けるステージ前――

 

『――黙れと言っているんだッ!』

 

 黒い空にドンッ、ドンッと響く銃声――群衆が肝を冷やして静まると、左手にハンドガンを握る矢萩は、すかさず拡声器越しにすごんだ。

 

『――反社会的団体のルルりんキングダムは、活動中止ッ! 逆らえば厳罰に処されるものと思えッ!――さあ、散れ、散れッ!』

 

 詰め寄ろうとするルルラーたちを三人衆と警備隊員が強引に押し返し、一般の観衆に帰るよう高圧的に指示する。顔を赤くしたり青くしたりする北倉と鎌田、腕組みをしてむくれたルルフに背を向け、他の警備隊員と一緒に観衆を追い払いにかかるジョアン――ラー・ハブ事件での活躍をきっかけに台頭した佐伯と警備隊は、求心力が低下した新田に代わって委員会を牛耳ぎゅうじっていた。

 

「ふふん」

 

 矢萩は目を細めてルルフたちを見据え、歯の間から赤い舌をのぞかせてせせら笑った。

 

「――お前らには、SOMA密造の嫌疑もかかっている。そのうち、きっと暴いてやるからな」