REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.33 獣、現る(7)

『――繰り返します。コミュニティメンバーは速やかに近くの警備隊員と合流し、防戦と消火活動に当たって下さい。繰り返――』

 

 リピートされる後藤のボイスメッセージを切り、ユキトは合流を急ぐ若者たちとすれ違いながら延焼する住宅地域を駆けた。そばに開いているヘブンズ・アイズには、移動する紗季とそれに近付く自分のキャラクター・アイコンだけ――全メンバー表示にすると、画面が見づらくなってしまうため――が映る。

 

「篠沢……!」

 

 暴れ狂う炎に熱せられ、砂の地面に何度も足を取られそうになりながら急ぐ――ステルス能力を有するラー・ハブの位置は分からないが、もしかしたら紗季が襲われているかもしれない――と、路地から飛び出したところで、慌てふためく若者とぶつかりそうになる。とっさに避けて衝突を免れた相手はそのまま行ってしまい、よろめいたユキトがスニーカーで踏ん張ったとき、その足元から噴火するように砂が噴き上がって黒い巨頭が飛び出す。

 

「――うろこミミズッッ!」

 

 飛びのくより早く、くねる巨体がはね飛ばして燃えるプレハブハウスの外壁に叩きつける。バリアがなければ内臓破裂していたであろう衝撃にうめき――慌てて横に転がると、それまでいた場所を炎が猛襲もうしゅうしてプレハブハウスをボオオッッと火だるまにする。

 

「――ぬッ!」

 

 四つん這いから立ち上がりかけたところへ迫る大口――そのとき、横手から飛ぶ何十もの光の矢がドドドドドドッッと黒うろこに突き刺さり、耳をつんざく悲鳴で炎と煙を震わせる。

 

「……これは、篠沢のスペシャル・スキル〈メテオライツ〉――」

 

 走らせた目に駆け寄る紗季――それに続く10人ほどが入る。小集団は、警備隊員が先頭切ってもだえるラー・ハブにアタックし、ダメージを与えてじりじりと後退させた。

 

「斯波、あんたこんなところで何してんのよ?」

「え? いや……」

 

 立ち上がり、ばつの悪い顔を紗季からそらしたユキトは、ガラスを引っかくような鳴き声を発し、辺りのプレハブハウスを巻き込んで暴れる巨大モンスターに焦点を合わせた。

 

「……あれを倒さなきゃ……行くぞッ!――」

「あ、ちょっと!」

 

 右の袖をたくし上げ、ユキトは雪辱しなければと光るこぶしを固めて駆け出した。