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REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.31 手の平(6)

 ファスナーが開き、薄暗いテントに入って来る気配でジュリアは目覚め、丸まっていた体を起こして寝ぼけまなこをこすった。

 

「なんだオメー、ふるえてるうちにねむっちまったのか?」

「……シンちゃー! どこまでいってたん? うちのこと、ほっぽっといてッ!」

 

 へたり込むようにあぐらをかくシンを大きな目でにらみ、紅潮した頬がぷうっと膨らむ。

 

「い、いや、クソがなかなかでなくてさ。ずっとフンばってたんだよ」

「もうおそとまっくらやないの。すごいじかんたってるよ」

「しょーがねーだろ。そういや、あのニホンザル、かえってきたらしいぜ」

「ユキくんが? ほんま?」

「コネクトみてみろよ。ちゃぱつババアからぶじだったってメッセージ、とどいてんだろ」

「……あ~ ほんまや。よかったあ」

 

 コネクトをチェックして胸を撫で下ろしたジュリアはシンを見て小首を傾げ、愛嬌ある鼻でくんくん嗅いだ。

 

「……シンちゃー、すごいあせくさいよ」

「あ、ああ、モレそうだったんで、ダッシュしたんだよ」

「ふぅん……」

「……そんなにクンクンすんなよ。うっとーしいな」

「……ああ、そっかあ!」

「あん?」

 

 目を凝らしていたジュリアは急に破顔し、がばっと身を乗り出した。

 

「シンちゃー、ユキくんのことさがしにいってたんやろ?」

「は、はあ? ナニいってんだよ? んなコトしてねーし!」

「じゃあ、なんでシャツのここと、ズボンのこことここがやぶれてるん? けがもしてるやないの」

「いや、これは……」

 

 慌ててイジゲンポケットから出されたポーションが傷の治癒と衣服の修復をきっちり行い、これらは転んだときにできたものだと、やたらに体をゆすりながら説明が加えられる。

 

「――はしってたら、つまずいてハデにコケちまったんだよ。バリアもちゃんとはってなくてさ……」

「えへへへぇ~」

「ナンだよ、しんじてねーのかよ」

「しんじてるよ。おおきに、シンちゃー」

「ナニいってんだ、ったく……」

 

 瞬く目をそらしたシンは赤らんだ頬を指でかき、にこにこ顔のジュリアをぶっきらぼうに誘った。

 

「……はらへったな。メシ、くいにいこうぜ」

 

【――こうして斯波さんは無事に帰って来て、再び監視下に置かれました。ですが、間も無く私たちの前には、魔人よりも恐ろしい『けもの』が現れることになるのです……――】