REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.29 魔人(2)

 ユキト宅を出ると、潤は詰所の監視当番に面会終了を告げて住宅地域に足を向けた。地面から不ぞろいに出た石の土台をショートブーツで踏み越え、黒髪を揺らしながら不整地地帯を足早に歩くうつむき加減の顔には、身を切る寒風かんぷうにさらされているような厳しさが張り詰めている。

 

「――!……」

 

 視線を下げていたせいで、前から歩いて来る学生服の2人組――紗季ともう1人の少女――に互いの表情が見える距離で気付いた潤は足を止めかけたが、美貌を冷たく整えると、そのまま真っ直ぐ進んで横を通り抜けようとした。

 

「加賀美さん」

 

 少しためらいがちに、紗季が呼び止める。恵成けいせい高校の制服――胸のピンクリボン、ワイシャツにキャメルのブレザー、ベージュ地に水色チェック柄のスカート――姿の横には、セーラー服姿の沢城麻綾が控えめに立っている。

 

「……斯波と面会してたんでしょ? どう、様子?」

「……あなたたちも面会?」

「面会というか、法務マネジメント局の仕事の一環。待遇に問題が無いか、スタッフの沢城さんとチェックに来たのよ」

 

 沢城が挨拶すると、潤は硬い表情のまま会釈をした。そして、「急いでいるから」と言って、さっさと行ってしまった。

 

「……何だか、感じ悪いですね……」

 

 沢城の感想にあいまいにうなずき、紗季は潤の後ろ姿に背を向けて面会手続きのため詰所に歩いた。彼女たちのはるか頭上では、陰り始めた陽に染まるおぼろ雲が揺らめいていた。