重く、だるい、泥人形然とした肉体……
暗くこもり、毛穴から脂汗をじわじわあふれさせる熱……
熱くあえぎ……寝返り……そして、またあえいで……
蜘蛛の糸を巻きつけられた虫のように……ベッドの中で上下スウェット姿がもがき、頭からかぶった掛け布団――それにのしかかる闇の重みにうめいて鋼の右手をガチチ……と握る。ほうほうの
「……くそッ……!」
歯ぎしりするユキトの脳裏にあの影――魔人が浮かび上がって口角をつり上げ、濡れた赤い舌を楽しげに跳ねさせる。首藤架穂――秋由大を殺害した悪鬼――
「――く……!」
強烈な憎悪が沸騰し、ユキトはナックル・ガントレットを消すと掛け布団の下で思いっきり、全力でこぶしを固めた。尖った爪が手の平に食い込み、有刺鉄線状の痛みが震える
「……僕は、あんなふうにはならない……! なるもんかッ……!」
引きつり気味の吠え声を上げ、ライトンを起動させると掛け布団をはいで上げた右手を光る鼻で恐る恐る照らす……血の色をした爪、節くれ立った太い指、黒色の厚い皮膚……長袖をまくり上げると変貌は肘を越えて上腕にまで及んでいる。今はまだナックル・ガントレットをはめて長袖を着ていれば、ばれることはない。しかし、首や顔まで変わってきたら……全身に広がったら……
「――ッ……!」
こみ上げる吐き気――左手で口を押さえ、ユキトは体を丸めてこみ上げるものをこらえ続けた。やがてどうにか
「……どうして……どうして、こんな目に……!」
運命を呪ったとき、ふと遠くで何やらわめき声らしきものが聞こえる。はっとし、黒い右腕を引き寄せて隠そうとしたユキトは、突然着信を知らせるコネクトにベッドマットが針の山になったように飛び起き、うろたえつつナックル・ガントレットを装着すると、ウインドウの微光に照らされながら相手を確かめた。
「――佐伯さん? こんな時間に――何かあったのか?」
髪を撫で付け、呼吸を整えてイメージ・コネクトに応答すると、中央にただならぬ緊張をみなぎらせる佐伯、その周りに自分と同じように応答してつながった隊員たちが分割画面に映る。そのうちの何名かは背景やそこから聞こえる音からすると騒がしい外にいるらしく、しかもひどく動揺しているようだった。
いったい何が?――緊張するユキトの前で佐伯がやや早口に非常事態を告げ、命令を下した――