REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©NaG∀T∴

Mov.27 白い闇(4)

 

「バリアを強めて霧を防御するんだ!――久喜宮君、みんなにディフェンス・アップをッ!」

 

 魔人が地を蹴る寸前、新田の指示が飛んで隊員たちの体がほのかな光を宿す。

 〈ディフェンス・アップ〉――バリアを強化する補助魔法――

 久喜宮香に魔法をかけられた隊員たちはさっと左右二手に分かれ、標的を一瞬見失った魔人に横手から秋が仕掛ける。

 

「――はあッッ!」

 

 右腕が爆発的に繰り出され、前腕に装着したパイル・シューターから鉄杭が飛び出てこけた頬に至近距離からぶち込まれる。右手首にアクセサリー〈パワー・ブレスレット〉をはめて攻撃力をアップさせた、鉄骨さえも砕くであろう強烈な一撃――だが、痩せぎすであっけなくポキンと折れてしまいそうな体格にもかかわらず、光を帯びた黒い肉体はわずかにしなるにとどまり、飛びしさった秋を歯茎むき出しの口でニチャニチャせせら笑った。

 

「――ひるむな! 攻撃だッ!」

 

 号令をかけた新田がフォトンブレイクをドドッと撃ち込み、ためらいがちな紗季の光る矢や魔法を駆使する久喜宮と北村の火炎、熱線攻撃、遠山のショットガンが左右から集中砲火を浴びせ、とどめとばかりに坂本が発射、命中させたグレネードの爆発が周囲の霧をブォオッッと吹き飛ばす。が――

 

「――うッッ!」

 

 目を見開く新田へ炎と煙から飛び出した影が迫り――避ける間もなく顔面にぶち込まれた黒いこぶしが、そのまま力任せにドォンと後頭部を地面へ叩き付ける。さらに魔人はブォンッと振り下ろされたミリセントの大剣をガァンと豪快にはじき、阿須見が繰り出した大槍を俊敏にかわして両名を蹴り飛ばすや、右手の中に猛火の塊――ミニ太陽のような火炎弾を発生させて後方の久喜宮たちめがけてぶん投げた。

 慌てふためく中に投げ込まれ、爆ぜてゴワァァァッッと暴れ狂う炎の竜巻――ブワッと吹き飛ばされ、髪や皮膚、戦闘服とプロテクターを焦がしながら熱い地面を転がる調査隊員たち――

 

(……こっ、これが、こいつの力……!)

 

 ひび割れそうなほど固められ、ぶるぶる震える鋼のこぶし――対抗するには自身もフルバーストするしかない。だが、そうすればデモン・カーズが活性化して魔人化が早まってしまうし、魔人が発する光とナックル・ガントレット越しの発光が似ていると周りに気付かれる恐れもある。それゆえユキトは、自分めがけて突進する敵を目にしたとき硬直してしまった。

 

「――何してんの、斯波ッ!」

 

 光の尾を引く矢が金縛りの横をビュッと抜けて黒い影のバリアにはじかれ、視界に飛び込んだ秋がパイル・シューターで殴りかかるのを見てユキトは解き放たれ、パイルをしのいで蹴り飛ばした魔人へ突撃した。

 

「――うおおおぉぉッッ!――ぅげォッッ!」

 

 真っ向からの体当たりでカウンターされ、ダンプカーと衝突したかのような衝撃で吹っ飛ぶ――もんどり打ち、ごつごつした岩をはじきながら地面を転がるのをよそに魔人・首藤は紗季や沢城等を次々殴りつけて地に這わせ、よろよろ立ち上がる新田たちに襲いかかる。暴走する独楽こまのように、狂気に酔う踊り子のように、痩せた長い四肢をぶん回し、胴体をしなやかにくねらせ――刃を、鎚を、炎や光熱弾を、弾丸を避け、跳ね返し、殴り、蹴り、魔力の結晶を叩き付けて――

 

「……ふ、ふざけんなよっ……!」

 

 顔を上げた腹這いのユキトは仲間がばたばた倒されていく光景にうめき、ナックル・ガントレットの下で右こぶしをぎりぎり握り締めて抑え気味にデモニック・バーストを発動させた。鋼がほのかな光を帯び、全身から力が燃え上がって痛みが引いていく。

 

「――お前なんかァッッ!」

 

 振るわれた暴力への怒り、魔人への強烈な嫌悪を起爆剤に霧を蹴散らして飛び、あごに裏拳を食らってぶっ飛ぶ檀と入れ替わりに突っ込む――たわいない獲物たちにいくらか油断していた魔人は、そのスピードに反応しきれず胸をドンと打たれてぐらつき、1,2歩後ずさった。

 

「――ぅあああああアッッ!――」

 

 左右のこぶしでの、めったやたらのラッシュ――だが、腹にめり込む黒い膝が猛攻を急停止させ、体が前に折れ曲がったところで横から張り手が左顔面を直撃し、意識がクラッシュしたユキトはガクッと崩れて地面に右膝を突いた。魔人化の進行を恐れて中途半端にセーブしている状態では、まともにやり合えるはずがなかった。