REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.17 慰霊の夜(1)

慰霊碑除幕式・慰霊祭

 

1.日時・・・テンペスト・ライフ 49日目 18:00~

 

2.会場・・・運営委員会事務所横 慰霊碑前

 

3.次第   開会の辞  (コミュニティ・サブリーダー 後藤アンジェラ)

黙祷  

式辞     (コミュニティ・リーダー 新田公仁)

献花     (高峰ルルフ)

献歌     (高峰ルルフ)

閉会の辞  (コミュニティ・リーダー 新田公仁)

 

4.その他・・・慰霊祭閉会後、となが食堂及び食堂外の特設会場で懇親会を開催します。

「……空いているテーブル、なかなか見つからないね」

「そうね」

 

 ラフな格好に着替えたユキトにうなずき、シーフード・サラダを盛った小皿と箸を持つ黒ワンピース姿の潤は、となが食堂からあふれた300人近くでごった返す食堂外の立食パーティ会場を見回した。イベントショップ〈レントール〉からレンタルした機材で設営され、オーディオ・プレイヤーからゆったりとしたBGMが流れる会場では、若者たちが食堂内と同じように山盛りの大皿から料理を小皿に取り分け、テーブルライトがともる丸テーブルごとに5、6人ずつ集まって――ルーツを同じくする者や親しい者同士固まっている傾向はあるが――歓談しながら箸を動かし、コップに注がれたお茶やジュースを飲んでいた。

 

「――パトロールの警備隊員以外、ほとんど来ているみたい。ここにこれほど人が集まったのは、食堂が初めて設置されたとき以来ね」

「そういえば、そうだね。――ん?」

 

 ピザと春巻きが乗る小皿と箸を持つユキトは、人群れの間から垣間見える会場端の薄暗がりでブルドッグ形をしたウインドウを凝視する影たちに目を止め、奥二重の目に嫌悪をにじませた。

 

「……〈ギャンブルどっぐ〉、やっている連中がいる。こんなときにまで……」

「スロット、ポーカー、パチンコ、ルーレット……いろんなギャンブルができるアプリなんて、禁止にすればいいのよ」

「そうだよ。ストレス発散に役立つとか聞くけど、多額のポイントをつぎ込む人間もいるってのにさ」

「大きな問題が起こらないと動かないのは、ここも同じね」

 

 薄暗がりが人陰に隠れたので、ユキトは潤を連れて丸テーブルと若者たちの間を縫って空きを探したが、それらしいところに近付いたところでそのそばに立っているのが葉エリー、そして紗季だと気付き、ブラウンの瞳と目が合って足を止めた。

 

「……何固まってんのよ、斯波」

「べ、別に固まってなんかいない」

「……テーブル探してるんなら、ここはあたしとエリーちゃんしかいないわよ」

「うん……」

 

 黙って横に冷たく立つ潤と、金縛りにかかったエリーが見ている前で、ユキトは煮え切らない態度を取った。ヤマト主義が蔓延する警備隊に加入したこと、シンとの殴り合いを通報されて罰ポイント刑を科されたことが紗季との関係をぎくしゃくさせていた。

 

「……これは『懇親会』なんだから、ここに来てもいいわよ。――ね、エリーちゃん?」

「は、はい。どうぞ……」

「遠慮しないで。あたしが嫌なら、無理にとは言わないけど」

「そんなこと言ってないだろ……――ここでいいかな、潤?」

「……構わないわ」

 

 半ば向きになったユキトは紗季の斜め前、潤は正面に立ち、小皿と箸を置く代わりにテーブルの上にあったジュースの瓶を手に取り、伏せられていたコップを引っ繰り返してそれぞれ注いだ。

 

「……隊服姿じゃない斯波たちを見るの、久しぶりな気がする」

「そうかな……篠沢たちも……」

 

 コップ片手に、ユキトは恥じらうエリーと紗季とを見た。ギンガムチェックのシャツとガウチョパンツのカジュアルさを人見知りで損なわせているエリーに対し、オレンジジャージのイメージが強かった紗季は白ブラウスとキュロットパンツで清楚な雰囲気を醸しており、近くに行くまで誰だかよく分からなかった原因にもなっていた。

 

「……そんなにじろじろ見ないでよ」

「じ、じろじろなんて……フツーの女の子っぽい格好してるからさ」

「……いつもフツーじゃないみたいに聞こえるけど?」

「別にそんな……僕はただ、その……」

 

 口ごもり、ジュースを飲んでごまかすユキトのそばで、潤がシーフードサラダのミニトマトを咀嚼する。すると、そこに人の間から現れた警備隊服姿のコンビが通りかかり、ユキトと潤に威厳ある声がかかった。