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REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.15 ハーモニー(3)

「……流されやすいわよね、斯波って」

「はっ? ぼ、僕は、ちゃんと考えて行動しているぞ」

「ふーん、どーだか」

「まぁまぁ」ジョアンが間に入る。「警備隊の仲間がいれば、何かのときに力になってもらえるじゃん」

「そうだね。ルルも、ユッキーが警備隊員なんて心強いな~」

「あのさ、佐伯さんはヤマト主義者なのよ? 純血日本人は素晴らしくて、移民やミックスは劣っているって考えの人が作ったコミュに入るなんて、良いことだとは思えないな」

「聞きかじった知識で、知ったふうなことを言わない方がいいわよ、篠沢さん」

「加賀美さん……」

「ヤマト主義は、純血日本人以外を否定してはいない。能力があれば認めてもらえるわよ」

「それって、おかしくない? 純血日本人ってだけで優遇されて、それ以外の人間は優れていなければ認めないって」

「純血には、ヤマトオノコ、ヤマトナデシコとして恥じないように自らを磨く義務がある。非純血だって自分を高めて認めさせるくらいでなければ価値は無いわ。そういう努力をしない怠け者なんて、蔑まれても仕方ないんじゃない?」

「怠けるのは確かに良くないと思うけどさ、でも、世の中には、努力しても人並みにできない人間だっているんだよ。そういう人たちのこと、切り捨てていいの?」

「ね、ねぇ、サキもジュンもheat upしないでさ……」

「ジョアンは黙ってて! あたし、おかしいことって嫌なのよ!」

「忠告しておきますけど――」

 

 口論に戸惑うユキトの横で、潤は黒い隊服を見せつけるように胸を張った。

 

「――これ以上佐伯さんを誹謗中傷すると、警備隊が黙っていないと思うわよ。それでも構わないのかしら?」

 

 脅しに紗季の顔がカッと上気したとき、脇から嘲笑がぶつかっていさかいを乱す。聞き覚えのある笑い声に鋼のこぶしをさっと胸の高さに上げ、ほんの数歩のところに立つシンをとらえて気を逆立てるユキト――挑発的なぼさぼさ金髪少年の斜め後ろでは、ジュリアが紗季と潤を当惑顔で見ていた。

 

「ふん、ワーワー、ギャーギャー、なにサワいでやがるのかとおもえば……」

 

 シンは黒い隊服姿を下らなそうに眺めて頭を傾け、潤に焦点を合わせて失笑を漏らした。

 

「――おい、ババア。ダセえヤツらとおそろいになったからって、チョーシにのるんじゃねーよ」

「こいつ!――」

「いいのよ、ユキト」

 

 潤は右手を軽く上げてユキトを止め、いとわしげにシンを一瞥して「相手にする価値なんて無いわ」と吐き捨てるように言った。

 

「――んだと、このクソババアッ!」

「こらぁ、シンちゃー!」

 

 半袖黒Tシャツの襟がつかまれて後ろにグイッと引っ張られ、よろめいたシンが振り返ってガアッと吠える。

 

「いきなりナニすんだよ、オメー!」

「うち、ケンカなんてイヤや。かなしいきもちになるもん。きたないことばつかうシンちゃーもイヤやわ」

 

 ジュリアは今にも泣きだしそうな顔で一同を見てクルッと背を向け、人群れをかき分けて去って行く。その背中にシンはため息をつき、ユキトと潤にガンを飛ばしてから面倒臭そうに後を追った。

 

「……まったく、何やってるのかしらね。あたしたち……」

 

 紗季が嘆息し、潤から体をそらして前――焚き火の方を向く。ルルフとジョアンも無言で前に向き直り、潤も視線を燃え盛る炎に投じた。気まずい空気が漂う中、ユキトは皆と同じように前を向き、微かな呼吸苦を感じながら早く集会が始まらないかと大遺構内を遠目に見つめた。すると新田が焚き火の前に移動し、遅れて続いた後藤がイジゲンポケットから出現させたワイヤレスのハンドマイク片手に群衆の前へ進み出る――