REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©NaG∀T∴

Mov.13 心を一つに(9)

「……お前やHALYって奴は、こんなことをして平気なのか? 人の命を何とも思っていないのか?」

『私には、命の価値というものがよく分かりません。よろしければ教えていただけますか、新田公仁?』

「ニッタさんッ! そいつに構っている暇なんかないですよ!」

 

 叫んだジョアンがドレスシャツごと胸を爪で切られ、ナックル・ガントレットに救われる。新田は襲って来た個体をかわすと脇腹にフォトンブレイクを撃ち込んで絶命させ、熱いあえぎを噴いてギリリリッッと歯ぎしりした。

 

「お前たちには分からなくても、俺には――人の親になった俺には分かるッ! だからッッ!――」

 

 全身のエネルギーを凝縮するように両こぶしがググッと固まり、新田の両目の虹彩こうさい日輪にちりんさながらに輝いて体から光のオーラがゴオオッッと噴き出す。

 

 スペシャル・スキル、〈オーバーロード〉――

 

 戦闘能力を爆発的に高めた新田の両手がバッと上に突き上げられると、光り輝いた両腕から発生した稲妻のドラゴン2体が猛って宙に身を躍らせ、テラ・イセクたちに片っ端から襲いかかって光のちりを飛び散らせる。そのすさまじい輝きと破壊力はユキトとジョアンを驚嘆させ、血と汗を飛ばして抗う若者たちの驚きを集めた。

 

「諦めるなッ!」

 

 新田はコネクトを通じ、皆を叱咤しったした。

 

「――踏ん張れ、みんなッ! 諦めたら、終わりだぞッ!」

 

 降下する群れに二回り大きくなった光熱弾フォトンブレイクが雄々しく連射され、群がる個体めがけて飛ぶ稲妻のドラゴンサンダーボルトが数秒のうちに数十体分もの光のちりを飛散させる。その獅子奮迅ししふんじんぶりは、コネクトから聞こえる勇ましい励ましと合わせて絶望しかかっていた若者たちを奮い立たせた。

 

「やるしかないな、ユキト!」

「そうだな……!」

 

 ジョアンにうなずいたユキトのナックル・ガントレットが頭部に炸裂して脳漿のうしょうを飛び散らせ、ファイヤー・ブリッドがぎとぎと・・・・した外骨格ごと胴体を炎でむさぼる。

 

 ――ちくしょう、こんなところでやられるものかッ!――

 ――新田さんが諦めていないんだから、私だってッ!――

 ――死んでたまるかッ、殺されてたまるかッ!――

 ――絶対に、絶対にリアルに帰るんだあッ!――

 

 息を吹き返した若者たちの刃がきらめき、銃器が勇猛果敢に弾丸を撃ち、火球や氷柱つららが雄叫びとともに力強く放たれる。倒しても倒しても降って来るテラ・イセクを相手に、新田たちは一心不乱に、取り憑かれたように戦い続けた。

 

「――そうだ、俺たちはこんなところで――ぐッッ!」

 

 金色こんじきの目が陰り、ぐらついた新田の左肩に爪がザクッと突き刺さる。うめいた新田は右手でテラ・イセクの胸部にフォトンブレイクをぶち込み、光のちりを浴びながらしわのひびが入った額を左手で強く押さえた。

 

「ぐ……!」

 

 ガクッと右膝を、次いで両手を地面に突いた新田は、脂汗が滴り落ちる地面に爪をめり込ませてあえいだ。

 

「……か、帰るんだ、俺は……――ぐおッ!」

 

 横から飛びかかった個体が新田を突き倒し、牙を立てた左腕を食い千切ろうとする。新田はおぞましい顔を右手でわしづかみにするや稲妻を発生させて吹き飛ばし、襲いかかる別の個体を転がってかわすと、フォトンブレイクを見舞って光のちりに変えた。

 

「……これ以上、無理は……くぬゥッ!」

 

 己にむち打って立ち上がり、稲妻と光熱弾のコンボで光のちりを飛び散らせて――が、弱まるオーラに比例して威力は低下し、致命傷を免れたテラ・イセクの爪がストライプ柄のドレスシャツを切り裂く。彼に従う若者たちも盛り返した勢いを次第にそがれ、再び窮地に追い込まれていった。

 

 衆寡敵しゅうかてきせず――

 

 いくら結束して立ち向かっても気力、体力の限界はいかんともし難く、もはや全滅は時間の問題だった。

 

「……く……こ、このままじゃ――」

 

 マリッジリングをはめた手がひび割れた眉間を必死に押さえたとき、その体が弄ばれるようにふわっと浮き上がり、視界が急激に崩れ始めて――