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REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.13 心を一つに(8)

 約600人 VS 約3000000000体――

 

 赤くぎらつく星の海――その底が抜けたように降る圧倒的な数にフォーメーションはたちまち崩れ、前列も後列も無く入り乱れた若者たちはベース・エリアの焚き火と肩の上に浮かぶライトンの光を頼りに死に物狂いで得物を振るい、銃器を連射、そして炎や稲妻を休みなく飛ばした。血で汚れた爪で切り付けられた者が悲鳴を上げて転がり、赤い単眼を撃たれ、黒光る外骨格で固めた胴を刃で裂かれたテラ・イセクが光のちりになる激戦場――ユキトは息を切らしながらナックルダスターでクモ似の頭部をバギャッと砕き、横から飛びかかる個体を殴り飛ばすと、上空を覆い尽した厚い怪虫の層を見上げた。

 

「……ハァ……こ、これじゃ……ハァ……切りが……!」

 

 下で仲間がやられると、ホバリングする大群からすぐさま代わりが降下して穴を埋める。傷はポーションや治癒魔法で治せるが、体力の消耗はどうしようもない。メガギガドリンクを飲んで体力が一時的にアップしてはいたが、絶え間ない襲撃は皆を――ユキトを疲弊させ、動きの切れを奪ってバリアの強度を低下させていた。

 

「――く、やられて……たま――ぐッッ! あぐうッッ!」

 

 背後からの衝撃で突き倒され、視界が黒い地面とクラッシュした直後にバリアを破って右肩にズグッと牙が食い込む。肉がかみ切られていく激痛に悲鳴を上げ、もがいたところで軽くなる背中――すぐさま立ち上がったユキトは、近くのテラ・イセクが光熱弾を食らって外骨格や血肉を飛び散らせ、消滅していくのを見た。

 

「――新田さん!」

「無事か、斯波君!」

 

 駆け寄る新田は、上空から降下するテラ・イセクたちをサンダーボルトで撃ち落とし、ユキトのそばに立つと肉がえぐれた右肩を案じた。

 

「――ポーションは? まだ持ってるのか?」

「ありますけど、傷なんかより体力が問題ですよ! 息つく暇も無いんですから!」

「つらいなら、ベース・エリアで休め。まだ敵はたくさんいるんだ」

「そんなのんきなことしていられるんですか? あそこに逃げ込んだまま、なかなか出て来ないヤツらだっているのに!」

「当たらないでくれよ! こんなとんでもない数になっているなんて、考えなかったんだから!」

「別に当たってる訳じゃ――」

 

 左右から飛びかかる影が、口論を中断させる。とっさにフォトンブレイクを叩き込む新田――だが、ワンテンポ遅れてしまったユキトは爪の一撃を覚悟して身を固くした。そのとき、横から飛んで来た火球がテラ・イセクを焼き、光のちりに変えて散らす。

 

「ユキトもニッタさんも、もめてる場合じゃないでしょう!」

「ジョアン!」

「シャルマ君――そうだなっ!」

 

 加勢を得たユキトと新田は二足歩行で地を蹴り、羽を震わせて飛来する怪虫たちを次々消滅させたが、そのたび新手が上空から降下してクワッと牙をむき、爪を振りかざして四方八方から襲いかかる。こぶしが外骨格を砕き、炎と稲妻が頭部を焼いて胴体を吹き飛ばす様を目の当たりにしても臆せず群がる怪虫に苦戦していると、3人の頭上にふっとワンが現れ、きらめいた。

 

『現在死者2名、重傷者17名です。犠牲者は、さらに増える見込みです』

「お前……!」

 

 ワンをにらみつけた新田は、やけっぱちのかけ声と悲鳴が入り混じって爆発反応を起こし続ける周囲に焦燥した目を走らせた。全身血だらけで武器をめちゃくちゃに振り回す者、テラ・イセクにのしかかられて泣き叫ぶ者、半狂乱になって逃げ惑い、転がって無様ぶざまう者――残酷な運命は、若者たちを破滅させるべく怒涛どとうの攻勢をかけていた。