REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©NaG∀T∴

Mov.13 心を一つに(5)

『23時50分……もうじきか。コネクトは、full openにしとくんだよな?』

「そうだよ。バトル中、スムーズに連絡が取れるようにさ」

 

 コネクトのウインドウに映るジョアンにうなずき、ワイシャツの両袖を肘下までまくったユキトはこわばった顔で脇の時計アプリを見た。中央チーム最前列にいる彼の左右、そして数歩下がった2列目では、同様にブレザーを脱ぎ、腕まくりをした中高生や普段着姿の少年少女が緊張で汗ばみながら剣や槍、斧、鈍器などを握って横にずらりと並んでおり、ジョアンが属する3列目と4列目も武者震いを横並びにして魔力を高め、銃器のトリガーに指をかけている。前2列、後ろ2列で各列およそ50名、合計200名強――その中央チームの左右では、ほぼ同じ人員、編成の左翼及び右翼チームが張り詰めた雰囲気で並んで決戦の時を待ち受けていた。

 

『後列が飛来するクモバッタをshootingし、地上に降りたのは前列がやっつける……うまくいくかな?』

「さあな。ヘブンズ・アイズじゃ、アバウト過ぎてどのくらい増えたか分からないし。予想以上に繁殖していたら、やばいんじゃないか?」

『うーん……27000くらいに減ったのが、この2日でどうなったかだよな~』

「赤い光の雲はそれほど膨らんでいないみたいだし、30000とか、多くても35000とかじゃないか?」

『だよね~ それくらいなら、こっちもover600だし、どうにかできるよな?』

「多分な」

『できるだろ~ 協力しながら1人当たり5、60体――戦闘スキルが高くないメンバーのしわ寄せがあっても、70体くらい倒せばいいんだから。ま、それ以上を相手にすることになっても、Love Powerを注入されたボクは絶対負けないけどねっ! くふふ……』

「な、何だよ、いきなりにやにやして……?」

『いやー、いいのかなあ~ でも教えちゃうの、もったいない気もするしなぁ~』

「……何が?」

『えへへ、この右のほっぺ、分かるかね、ミスター・シバ?』

「……は? 頬がどうしたんだ?」

『そうだよなあ、見えないよなあ~ ボクらだけの絆だもんな~』

「……くねくね気持ち悪いな。もうじきバトルが始まるんだから、もっと緊張しろよ。――あ、潤だ」

 

 キャッチしたコネクトを許可すると、画面が左右に2分割されて潤のバストアップがジョアンと並ぶ。

 

『シャルマ君と話をしていたのね。健闘を祈るわ、ユキト』

「うん、潤は右翼の後列だけど、注意してよ」

『ありがとう。ユキトも新田さんたちと頑張ってね』

「ありがとう、潤」

『……もしもし、ジュン。ボクにはエールを送ってくれないのかい?』

『え?……シャルマ君も頑張って』

『素っ気ないなあ……ま、ボクにはルルりんがいるからいいけどさ。しかし、HALYってのはどうしてボクたちをこんな目に遭わせるんだろうな?』

 

 首をひねるジョアンを見てユキトが上げた視線の先――斜め前方、中央チームの数歩前で大遺構の向こうに広がる闇と対峙している新田の数メートル頭上では、まがまがしいうろこ雲をバックに黄金の光球が冷たい月のごとく浮かんでいる。それをにらみつけたユキトは、第一ボタンを外したワイシャツの襟を煩わしげに引っ張り、はがねをこすり合わせながらナックル・ガントレットをはめた右手をガチチ……と握り固めた。

 

『――あ、サキからコネクトだ』

「ん、僕のところにも」

 

 ユキトたちがコネクトをつなげて紗季が加わると、潤の細い眉が心なしか硬くなる。

 

『あ、加賀美さんもいたんだね。あたしは左翼の後列で頑張るから、みんなもクモバッタなんかにやられないでね。――斯波、体調はどう?』

「あ、ああ……平気さ」

『なら良かった。お返し忘れないでよ』

「メガギガドリンクのことだろ。分かってるよ」

『5分前だわ』潤が口を入れる。『そろそろ切りましょうか』

『そうだな。――じゃ、ユキトもサキもジュンもgood lockで!』

 

 笑顔でこぶしを挙げたジョアンが、次いで紗季も消えた。すると、潤の表情が和らいで唇が緩まる。

 

『無事でね、ユキト』

「うん」

 

 小さく右手を振った潤が消えてウインドウが閉じると、ユキトは新田の気張った背を斜め後ろから見、それからヘブンズ・アイズに映る赤い光点の集合を確かめて、消灯に備えて周りがライトンを起動、点灯させるのに倣った。と、そこに陣側に向き直った新田から全員に向けてコネクトが入る。