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REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.13 心を一つに(4)

「――皆さん、もうじき午前0時になります。――」

 

 新田はベース・エリアを構成する焚き火以外が消えて明かりが弱まれば、テラ・イセクの大群がきっと襲来するだろうとあらためて告げた。

 

「――与えられた時間は、十分ではなかったかもしれない。それでも俺たちは、できる限りのことをした。その努力はきっと報われると、みんなが心を一つにすれば、例えテラ・イセクが予想以上に増えていたとしても必ず全滅させられると俺は信じている! ともに頑張ろう! 生き延びるためにッ!」

 

 熱い語りに唯一の懸念事項さえも些事さじと思えるほど勇気付けられ、3Dウインドウにびっしり並んだ表情の火力が増す。きっと勝てると、生き延びられると信じて困難に立ち向かおうとする意志の集合体がそこにあった。

 

『に、新田さん!』

「エリーちゃん……」

 

 思い詰めた少女の顔が端から拡大され、小さな口がもどかしげに動く。

 

『わ、わたしは、弱くて戦えません……だから、せめてケア・チームの一員として、精一杯頑張ります。皆さんのため……新田さんのために……』

「ありがとう、エリーちゃん」

 

 エリーのレスポンスを皮切りに、自分たちを奮起させる発言が、どっと沸き起こる。熱気を放つウインドウに新田は情熱的に応え、右手の中に『メガギガドリンク』というラベルが貼られた金色のガラス瓶を出現させた。

 

「――よし、みんな! メガギガドリンクを飲むぞっ!」

 

 金のスクリューキャップを開ける新田にならい、瓶を高くかざす若者たち――

 

「――俺たちの勝利のためにッ!」

 

 叫んだ新田に続き、皆が黄金色の液体100ミリリットルをぐいっと飲み干す。スタミナアップ効果があるドリンクは、闘士たちの全身をカーッと熱くし、燃え上がらせた。

 

「勝つぞッ! 絶対にッッ!」

 

 突き上げられた右こぶしに、大スターを前にしたファンたちのごとき興奮が応える。その反響に新田は満足し、コネクトのウインドウを閉じてスタンバイにした。

 

「素晴らしいパフォーマンスです」斜め後ろから後藤が冷静に褒める。

「君に教わったようにやっただけだよ。しかし、こんな状況だからとはいえ、みんながまとまってくれるのは嬉しいな」

「今は、全員の利害が一致しているからですよ」

 

 黒く艶めく縁のメガネの奥で、美しくも鋭利な目が冷ややかに細まる。

 

「――だから、曲がりなりにも団結できているのです。かじ取りが大変になってくるのは、この決戦を乗り越えた後からです」

「……そうだろうな。これからも色々助けてくれよ、後藤さん。――佐伯君も頼りにしているからな」

「ありがとうございます。私にできるだけのことはさせていただきます」

「自分もです」

「ありがとう」

 

 左右で慇懃に下げられる頭に礼を返し、ほっと微笑する新田。

 

「それでは、私はそろそろチームのところへ参ります」

 

 左翼チームの指揮を任されている後藤が一礼して離れると、佐伯も右翼チームのところに行くと言って去った。残った新田はマリッジリングを見つめ、右手の指の腹で愛しげに撫でた。

 

「……絶対、生きて帰るからな……!」

 

 プラチナのきらめきに決意を込め、新田は自分が指揮する中央チームの方へと踏み出した。