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REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.13 心を一つに(2)

「今、あいつに『頑張ろうな』って声かけたら、無視されちゃったよ」

「可愛げがないのよ、あいつは。まったく」

「サーねえ、シンちゃーのこと、かんにんな~」

「ああ、うん、いいの。ごめんね、ジュリアちゃん。――ところでジョアン、バトル頑張ろうね」

「もちろんだよッ!」

 

 ジョアンは勇ましく右こぶしを突き上げ、フルパワーのまなざしを力強く輝かせた。

 

「――ボクには、ルルりんをbrilliantなhyper idolにするって目標ができたんだからッ!」

「ふふ、ジョビーってば」

 

 ジョアンの隣でルルフが口元を軽く右手で隠してくすくす笑い、紗季は「えっ?」と自分の耳を疑う表情をした。

 

「……ジョ、ジョビー? それって、ジョアンのニックネーム?」

「そうよ。ルルがつけてあげたの。――ねぇ、ジョビー」

「そうだね、ルールりんっ」

「あはは、ジョビーやて。――エーリ、かいらしーなあ」

「え、ええ、かわいいですよね……」

「……別にいいけどさ。じゃ、あたしたちもチームのところに行こっか」

Rogerラジャー!」

「あ、待って、ジョビー」

 

 ルルフはジョアンを呼び止め、少し背伸びしてカフェ・ラッテ色の頬にチュッとキスをした。予想外の出来事に紗季は目を丸くしたが、それをはるかにしのぐインパクトを受けたらしいジョアンは魂を消し飛ばされたようにぼう然とし、そしてよみがえった顔を急激に上気させて口をぱくぱく動かした。

 

「……ル、ル、ル、ルルりん……い、い、い、今、キキキキキ――」

「頑張ってね、ジョビー」

「は、は、は、は、はいいいッッッ―――! ジョビー、行ッッきまーすッッッ―――!」

 

 ジョアンは燃え盛る太陽にさえ突っ込みかねない気迫で敬礼し、鶴翼の陣が形作られ始めている大遺構前へ激しく蒸気を噴く暴走機関車さながらにドドドドドッと突進して行った。

 

「……すっかり舞い上がってるわね、あいつ……」

「ふふ、可愛いじゃない」ルルフが両手をきらきら振り終える。「あれくらいでやる気が出るのなら安いものよ。彼には、クモバッタをいーっぱい倒してもらわなきゃだからね。篠沢さんも誰かにしてあげたら?」

「えっ? いや、あたし別にそんなことしたい相手いないし……」

「うち、シンちゃーにチュッてしてあげるよ! でもシンちゃーおこるんや。なんでやろ?」

「そうなんだね、ふぅーん……――葉さん、あなたは?」

「ひゅええッ?」

「エリーちゃん、こんにゃくの悲鳴みたいな声出さないでよ。――高峰さんもからかわないで」

「からかってなんかいないわ。――葉さんだって、したい人いるでしょ。例えば、新田さんとか。いっつも気にしてるものね」

「ええええええッ? そ、そそそ、そんなこと……」

「エーリはニーちゃんにチュッしたいん?」

「ちっ、ちちちち、違います!――あ、いえ、そ、その、に、に、新田さんがダメとかじゃなくて、あの、新田さんにはいるんです! 奥さんと赤ちゃんが! だっ、だから、そ、そんなこと……」

「葉さんは、良い子なのねぇ……ルルなら、欲しいものは奪っちゃうけどな~」

 

 エリーはうつむいて小さな目をしきりに瞬き、居心地悪そうに小柄な体を縮こめた。それをルルフは面白そうに眺め、赤く実った唇の左端を微かにつり上げた。

 

「それくらいにしてよ、高峰さん。エリーちゃんを困らせないで」

「はーい、ごめんなさい。もうやめまーす」

「……じゃ、あたしそろそろ行くから。――エリーちゃん、来ない人がいたら、さっきみたいに呼びかけるのよ」

「は、はい、分かりました……」

 

 ベース・エリアには、呼びかけに応じて十数人ほどが集まっていた。紗季が大遺構前へ行ってしまうと、ルルフは寄る無さげなエリーにクルッと顔を向けて、にいっと微笑んだ。

 

「コネクトでエールくらい送ってあげれば? きっと喜ぶわよ、新田さん」