闇が薄れて夜が明け、薄墨色に煙った空が真新しいタオルケットに包まった少年少女たちの上で
「もうちょっとで定刻ね」
「そうだね」
隣で時計アプリを見る潤にうなずき、ノーネクタイのユキトは前に立つ者たちの肩越しに大遺構前――炎が消された井桁組みの薪を背に立つ新田とその横の後藤、そして2人の頭上約2メートルに異物感を
「眠そうね。少しは休めたの?」
「うん、まあ」ユキトは、あくびをかみ殺した。「潤はよく寝ていたよね。寝息も立てていたし」
「やだ、恥ずかしい」
「いや、別に変じゃなかったよ。しとやかな感じでさ」
ユキトが恥じらう潤に慌てていると、しゅんとしたエリーを連れた紗季が人の間を縫って来た。
「おはよう。2人ともよく眠れた?」
「あ、う、うん」
昨晩より和らいだ雰囲気にユキトは肩の力を抜いて体を向けたが、潤は能面顔を僅かに背けて左手を自身の右腕にかけた。
「もうじき始まるわね。みんな、ちゃんと集まってくれて良かったわ」
「そりゃあ、新田さんの名前を使って呼びかけているからね」とユキト。「これを見れば、誰がリーダーにふさわしいか、あらためて確かめるまでもないよ」
「あたしもそう思うけど、一応
「ん? あ、まあね」
「彼と彼女なら、あっちにいるわよ」潤が興味なさそうに人の間を指差す。「取り巻きを連れて来られてもうっとうしいし、別々でいいんじゃないかしら」
「取り巻き?」
「昨夜のパフォーマンスで興味を持った人たちが群がっているのよ。だから、彼もそばを離れられないんでしょうね」
「ふぅん、そうなんだ……」
紗季は背伸びしたり、栗色の頭を左右に動かしたりして視界を遮る若者たち越しに確かめた。聞いた通り、群れの斜め後ろできらきら目立つツインテールを男子十数名が取り巻いて、その輪の中で傍らをキープしようと
「――なるほどね。ま、高峰さんは男子に人気ありそうだしね」
「そうかしら? 私にはよく分からないけれど」
「だってアイドルの卵だし、見た目もかわいいじゃない?――ね、斯波?」
「えっ? あ、その、フ、フツーじゃないかな?」
うろたえたユキトは紗季の横で地味な褐色の顔をさらに暗くしているエリーに目を止め、話題を転じた。
「――か、彼女、元気ないね。どうしたの?」
「ああ、エリーちゃんね。災難続きの上に、新田さんを後藤さんに取られたってしょげてるのよ」
「そ、そんなんじゃ……」
うつむいたエリーが小さな目を瞬いてガウチョパンツの左右をきゅっと握ると、小柄なローティーンの体がいっそう小さく感じられる。
「ほら、斯波お兄ちゃんも心配してるよ。今はお仕事でくっ付いてるだけなんだから」
「わ、わたし、別に……」
「あんまりからかうなよ。そういえば、あのピンク頭の子は一緒じゃないのか?」
「ジュリアちゃん? あの子ならシンと後ろにいたよ。すっかり仲良くなったみたい」
「あいつと……?」
「そんな顔しないでよ。あの子がどんなことしたかは聞いてるけど、ジョアンたちを助けたりもしたんだから」
「まともな人間は、他人を襲ったりしないわよ」
顔を斜にしたまま、潤がすぱっと言う。
「でも、人間って白か黒に分けられるものじゃないでしょ? あの子が斯波や加賀美さんにしたことは悪いことだけど、良いところは認めてあげてもいいんじゃない? 切り捨てるのは簡単だけど、それじゃダメなんじゃないかな?」
「……僕には、よく分からないけどな」
「そんなこと言わないでよ。仲間でしょ」
「ユキト、始まるわよ」
琴の