REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.8 テンペスト2.0(3)

 だが、血走ったまなざしは3Dの光球をむなしく突き抜けるばかり。デモニック・バースト発動を知らせたときのように頭に声を響かせることもなく、高みで黄金色に光るだけのワンにユキトは憎悪を激しくたぎらせた。

 

「――ユキト?」

 

 横からのぞく潤に気付き、ユキトは鋼の右手で引きつった口元を隠し、目をそらした。

 

「……すごく怖い顔していたわよ、今」

「……ひど過ぎる話だからさ……許せない……!」

「とんでもないことになっちゃったな、ボクら……――ねぇ、ルルりん?」

「ん? あ、そうだね……」

 

 軽くうなずいたルルフが左肩にかかるサイドのブロンドを指でいじったとき、大遺構前の広場でオレンジ色の炎が派手に噴き上がり、皆の視線を一気にさらった。

 

「なんやの、あれ?」

「flames?」

「行ってみましょうか、ユキト」

「うん……」

 

 ユキトはうなずき、歩き出した周りに流されて明かりへ、炎の方へと移動した。転がる巨石を避け、土台を乗り越えて広場に足を踏み入れると、大遺構の前で炎をまぶしく燃え上がらせる井桁いげた型に組まれた薪が、それに後ろから照らされて目立つ新田、佐伯と後藤、そしてその近くに影薄く立つエリーが見えた。

 

「すごーい、キレイやぁ~」

「そうだね」紗季が目を和らげる。「林間学校のキャンプファイヤーを思い出すな……でも、あんなもの、いつの間に作ったんだろ?」

「作ったんじゃないみたいよ」

 

 ルルフが店舗デザインのウインドウと、その前に浮かぶ3D少女ミセっちを指差す。

 

「え、どういうこと、高峰さん?」

「〈Nature Dream〉ってStoreZのアウトドアショップに売ってるわ。ほら、これ」

『本体は2000ポイント』ミセっちが緑髪の頭をポリポリかき、かったるそうに教える。『ちなみに、炎を燃やし続けるにはポイントが必要だかんね』

「へえ、greatだな。そんなものまで売ってるんだ?」

『前にも言ったじゃん。ドラッグとかを除けば、どんな物でも買えるよ。ポイントさえあればね』

「大した品ぞろえね。――ねぇ、あたしたちももっと前に行こうよ」

 

 紗季に促され、ユキトたちは炎に寄って行く若者たちと一緒に歩いて、焚き火を背にした新田とその右隣、左隣にそれぞれ数歩離れて立つ佐伯と後藤を前に弧を描いて立ち、ライトンを消した。火の粉を舞いのぼらせ、辺りを熱しながらくねって踊る焚き火には3D表示のゲージが付属していて、燃料――チャージされたポイントの残量を示している。炎の光背を得た新田は、何かを期待して待っている若者たちを陰影に染まった表情で眺めると、ドレスシャツの袖を肘の下までまくった腕を軽く左右に開いて、落ち着いた声で語りかけた。