REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©NaG∀T∴

Mov.7 合流(2)

「……ここにいるのは、僕らも入れて236人か……」

 

 ユキトが見回すと、ジョアンがヘブンズ・アイズを見て「どんどん集まって来るぞ」と知らせた。マップ上では方々からのUnknown接近が確認でき、空間の揺らめきから断続的に浮かび上がるニューカマーを新田が迎えに出るたびに新規が増えていった。

 

「何だか、むっとするわね」

 

 高まる密度に、潤が少し眉を寄せる。上空で光るワンの下、得体の知れないゾーンに放り込まれた不安から若者たちは自然と交ざり、流動に押されてごたつきながら新田を追って動いた。

 

「kidnappedは、666人だったよな」

「あいつはそう言ってたけど……でも、殺された人もい――んっ?」

「あ、すっ、すみません」

 

 肩が軽くぶつかったことを詫びる相手を見たとき、ユキトは黒髪を6:4に分けて左右にすらっと流したロングヘア、色白で優しげな顔や自分より少し背が低く、きゃしゃな体付きから女の子かと思った。しかし、服装は白ブレザーにワイシャツ、ブルーのネクタイ、ベージュのスラックスに黒革ローファーというもので、ユキトの意思に従って検索されたアドレスブックは、王生いくるみ雅哉、15歳――というプロフィールを表示した。

 

「すみません、ぼく、ボーっとしちゃって……」

「いや、こっちこそ……」

 

 王生は柔らかな黒髪を揺らして何度も頭を下げ、もうモンスターと戦ったんですかとユキトたちに尋ねた。

 

「戦っちゃったわよ。あたしたち、大変だったんだから。――ねぇ?」

「そうそう。ホントにdyingだったんだぞ。――なぁ、ユキト?」

「ぅん……」

「……そうなんですね。ぼく、正直怖くて……」

 

 ひ弱そうな眉を下げ、青白い顔を伏せる王生。間近でそれを見ていたユキトは微かな不快感を覚え、視線を右にそらした。と、その先に黒ポロシャツの上にパープルのカーディガンを着て、黒ジーンズ、ブラウンのトレッキングシューズと合わせたキツネ目の青年が、人波をかき分けて近付いて来るのが見えた。その青年――アドレスブックによるとクォン・ギュンジという18歳の韓国系日本人は、ユキトたちを見て目をかぎ爪状に細め、焦点を外すと黙って王生の右腕をつかんだ。

 

「あっ、クォンさん……」

「また仲間を見つけたから、紹介してやるよ。さあ、行こうか。ほらほら、早く早く」

「……はい……」

 

 180センチ近いクォンに引かれた王生は、気が進まなそうな表情をしたものの、おとなしくユキトたちから離れ、人波に隠れて見えなくなった。

 

「連れて行かれたわね、あの子」潤がユキトに言う。

「そうだね……」

 

 ユキトは何となく潤と目を合わせづらく感じ、うつむいた。と、何かを目にしたジョアンが「あッ!」と声を上げて伸び上がり、ふらつくやぐいぐい引っ張られるように歩き出した。

 

「ちょっと、どうしたのよ?」

「ん? あ、サキ! いたんだよ、angelがッ!」

「はぁ?」

「angelだよ! ツインテールのッ!――ほら、ユキト! あそこッ!」

「えっ?――あっ!」

 

 指差す先を見て、ユキトの目がフラッシュをたく。人の波間できらめくブロンド、色あせた紫のジャージ――それは見覚えのあるものだった。