REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©NaG∀T∴

Mov.3 ツインテールの翼(1)

 

 (――て、天使?)

 

 ユキトがそう錯覚したのも無理はなかった。木々が無秩序に茂り合い、幹をいびつにくねらせる揺らめきから浮かび上がる人影――その頭から黄金の翼が生え、羽ばたきながら樹海の薄暗がりを淡く照らすように見えたのだから。

 

(……お、女の……子……? ツインテールの――)

 

 ぼやけていた像が次第にはっきりし、ユキトの瞳に少しずつ大きく映るハイティーン・ガールの疾走に合わせて躍動するブロンド――左右の耳の上でシルバーのシュシュにまとめられた髪の先が膝裏にかかる長さのツインテール、それがきらめく翼の正体だった。虎に追われるウサギのごとく一目散に走って来る南米系の風貌をしたツインテール少女は、色あせた紫のジャージ上下に履き古したスニーカーというどこか貧しげな身なりだったが、十数メートルの距離を越えて網膜に焼き付けられるコケットな美貌――なまめかしいあえぎ顏と揺れる胸、グラビアを飾れるルックスがユキトの視線を釘付けにして鋼のこぶしを無意識に下げさせ、その横に立つジョアンを見とれさせた。

 

「――止まりなさい!」

 

 ぼんやりしているユキトたちの間から潤がマジックダガーを振り、氷柱をツインテール少女の前に撃ち込んで急停止させる。

 

「――ちょっ、ジュンっ、violentだなッ!」

「だって、危険人物かもしれないのよ?」

「だけど、相手はangelだよ!」

「は?」

「い、いや、その、つまり、あんなにlovelyでbeautifulなんだから、もうちょっとfriendlyにさ――」

 

 潤と混乱気味のジョアンとのやり取りでユキトは我に返り、一方7,8メートル向こうのツインテール少女は足元に突き刺さった50センチほどの氷柱に垂れ目を丸くしながら息を切らし、3人を見て瞬きすると唾をゴクッと飲み込んだ。

 

「――げた方が……い……わよ……――」

「えっ?」

 

 聞き返すユキトだったが、ツインテール少女は3人を避けて前のめりに走り出し、待ちなさいと呼び止める潤を無視して深緑の揺らめきに消えてしまった。

 

「……どうしたんだよ、彼女?」

 

 目を奪われていたユキトは宙に浮かぶワンを仰ぎ見、そして眉をひそめた。

 

「――って、お前に聞くだけ無駄か」

『おっしゃる通りです』

 

 にらむユキトの耳にメキメキメキッとへし折れる幹の絶叫が飛び込み、ヘブンズ・アイズの画面上に真っ赤な【WARNING】表示が現れてけたたましい警告音が響く。驚いてマップを確認したユキトは、自分たちのところに新たな白い光点、そして、それにくっ付いてモンスターを表す赤い光点が三つ接近していることに動揺した。