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REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.56 ハーモニー再生同盟

ハーモニー再生同盟憲章けんしょう 第一条 この同盟は、このゾーンに生きるすべての者たちが互いを尊重し、調和して暮らせる社会を目指すものである。 第二条 この同盟は、志を同じくする者であれば、ルーツ、性別、所属等に関わりなく加盟者になることがで…

Mov.55 戦場を駆ける振袖

霧雨で煙る平原に雄叫びがとどろき、ずるずる流れる草を泥まみれのノビータイヤがひいて千切り――堰せきを切って連続する銃声、砲声が一帯を破壊のちまた・・・に変貌させる。ヤマト護魂戦線全滅の報をきっかけに加賀美潤率いるヤマト軍総勢20名は流動を駆…

Mov.54 魔王(3)

「――!」 右斜め前方に転じられた目を赤い光がくらまし、ハッとする三人衆の見ている前で胸がはだけた上半身と腰とを消し飛ばそうとした高出力のビームがバリアにぶつかってバアアッッと拡散――とばっちりを食った木々が黒焦げになり、下生えごと焼かれてえぐ…

Mov.54 魔王(2)

暗雲へ稲妻状に伸びる黒ずんだ広葉樹群の間――赤黒い閃光が走って爆発音がとどろき、爆心地付近の木々を瞬時になぎ倒した凶猛な爆風が空間を激しく揺さぶって森を席巻する。鳥獣たちの絶叫がどす黒く濁った空に飛び散り、焼け焦げた樹木の臭いが辺りに立ち込…

Mov.54 魔王(1)

雲の濁流から針のような小雨が降って密生した下生えを打ち、まだらにある池塘ちとうの水面みなもに波紋を描く。雨で煙り、陰気なにおいがじっとり立ち込める湿った草原……後藤アンジェラは赤いサイドポニーテールを左肩に流した黒外套の下で腕組みをして立ち…

Mov.53 夜明けの決意(2)

うっすら開いた目にぼやけたうつつ・・・が映り、だんだんと薄明るい天井がはっきりするにつれて一重まぶたが上がる。微光に誘われて枕の上で頭を傾けると、ぼんやり白んだ掃き出し窓のカーテンが黎明れいめいを知らせていた。眠気の残滓を払ったエリーは掃…

Mov.53 夜明けの決意(1)

カラーフロアの床から離れた足にパッとスニーカーを履いて土間に下り、ドアを開けて外に出たユキトは閉まらないように押さえながら脇にどいた。数秒後、その前を両手でトレイをしっかり持つエリーが通り、日没間も無い蒼い砂漠にドームを描くだいだい色の明…

Mov.52 邂逅

ざらついた流動に突き飛ばされてよろけ、ユキトはガクンと折れた両膝を小石混じりの砂に突っ込んだ。へたり込み、背中を曲げてうなだれた体が、薄ら寒い揺らめきにたゆたう……黒の十字架が引き起こした〈黒の大流動〉に押し流されて1カ月……着たきりのスウェ…

Mov.51 真相が呼ぶ暴走(2)

紗季の胸から爆発して一帯を飲み込み、異次元へ引きずり込まんばかりにうなって荒れ狂う黒い輝き――そびえるルルフキャッスルをグラグラ揺さぶり、天変地異に狼狽するガーディアンたちを散り散りに押し流すそれは、放たれたデストロイ・ブーケのビームと砲弾を…

Mov.51 真相が呼ぶ暴走(1)

とめどなく発射され、空間をジグザグに切り裂きながら無差別に急降下する小型ミサイル群――カーリフトやハイパーゴッデス号に炸裂し、地上に突っ込んでガーディアンたちを吹き飛ばす爆発の乱打――破片を高速で飛び散らせながら咲き乱れる爆炎―― 「――くッ、うう…

Mov.50 赤い死の仮面(3)

かすんだ光がともる密室に重苦しいため息が漏れ、よどんだ空気の陰りが増す……地下の小部屋に放り込まれてから8時間余り……打放しコンクリートの壁に重だるい体をもたれさせ、冷たい床に足を投げ出したユキトは、太ももの上の両手にがっしりはまった封印の手…

Mov.50 赤い死の仮面(2)

いくつもの林に囲まれてそそり立ち、ライトアップされて白く輝く大理石の巨大ピラミッド……星の欠片すら見えない夜空に映えるルルフキャッスルへ、てんでんばらばらに枝を伸ばす木々の間を風のように駆け抜けて接近する影―― 黒装束のクォン・ギュンジ―― ヘッ…

Mov.50 赤い死の仮面(1)

きらびやかな円柱型の密室がスウッと上昇――沈み込む感覚に襲われ、ユキトは重い頭をいっそう垂れた。 (……これさえなければ……) 両手首にはまる封印の手錠から陰鬱な目をのろのろ動かし、自分の左前――コントロールパネル前に立つ北倉のがっちりしたレザーの…

Mov.49 笑う悪魔(3)

「――おらおらァ! こんなもんかよ、軍将様ァッ!」 「――はあッッ!」 鋭い突きをかわして斬り結んだ佐伯は、押しやろうとする矢萩の力を利用して後方に跳び――下腹部から燃え上がる気合で刃を輝かせ、生み出した9頭の猛虎を斬撃とともにグワッッと解き放った…

Mov.49 笑う悪魔(2)

くすんだ目元をゆがめ、佐伯は肘を突いて組み合わせた手がテーブルに落とす影をにらんだ。背中を曲げて座る姿を天井の蛍光灯が照らして浮かび上がらせるそれは、薄ぼんやりとしていながら底なしに深くも感じられる。峡谷から後退し、森を抜けて再び平原にキ…

Mov.49 笑う悪魔(1)

「……う……」 意識が打ち上げられ……波に洗われる感覚にうめき、ユキトは重いまぶたをギチギチと上げた。ぼやけた狭間に映る、のろのろ流れる赤茶けた地面……確か突然世界が激震し、熱狂的な流れに飲まれて……と記憶の糸を手繰り、へろへろの体をどうにかこうにか…

Mov.48 世界フィーバー(3)

『何をぼんやりしている! 早く手を貸すんだッ!』 「だ、だけど、これって仲間割れじゃないですか?」 「そうですよ」と、同じくコネクトされた紗季。「助けてもらった借りは、さっきの戦いでチャラなはずです。これ以上利用されたくありませんよ」 『分か…

Mov.48 世界フィーバー(2)

――ユン、そしてイ・ジソンのATVが薄れゆく霧から現れ、合流してアイドリング状態になると、疲れ顔のクォンはATV上から自軍メンバーがそろったことを確かめて重たげな息を漏らした。消耗に比例して霧は力を失い、もはやちょっとした煙幕でしかない。ク…

Mov.48 世界フィーバー(1)

赤い刃は、ピンクの髪に触れる寸前で止まっていた。 羅神の柄をぎりぎり握り、息を震わせてにらみつける佐伯…… それを、静かに見つめ返すジュリア…… 揺らめく霧の世界で相対する意思は、肌寒い空気をいっそう張り詰めさせた。 「……できへんよ、シューくんに…

Mov.47 よみがえる悪夢(5)

「……学校よね、ここ?」 「うん……また誰かとシンクロしているんだ……」 同年代の制服姿とすれ違い、連なる無個性なドアと窓に目をやって……ユキトは、まるで幽界といった感の薄暗い廊下を紗季と慎重に歩いた。入谷たちと戦ううちにユンたちとはぐれ、濃霧と幻…

Mov.47 よみがえる悪夢(4)

「……お前は、あのとき……」 抜き身の羅神片手にATVから降り、佐伯は流動に袖や裾を揺らされながら間合いぎりぎりに立つ少女を凝視した。くしゃくしゃのピンク髪、まだ未成熟であどけない体を飾る花柄の半袖チュニックTシャツ、ハーフパンツから出てエジプ…

Mov.47 よみがえる悪夢(3)

竜の道さながらに荒々しくくねり、うねる谷間……揺らめき、のろのろ流れる濃霧の河……視程数十メートルほどのその底――鼻口を覆うガスマスクをつけた一団が、転がる小石を時折蹴りつつ息をはずませる。スウェットパーカー&パンツのユキト、オレンジジャージの…

Mov.47 よみがえる悪夢(2)

縊死いしした父親を発見したとき、矢萩は凍り付いた。 競売にかけられた、かつて自分が所有していた工場の事務所でノブにベルトをかけ、ドアに寄りかかって土下座するように首をつっていた父……ジャージパンツを濡らし、床を汚したアルコール臭い父親の尿臭に…

Mov.47 よみがえる悪夢(1)

蒼く、薄ら寒い夜明け――全員ステルス・モードにしたハーモニー軍はキャンプを引き払って進軍を開始、冷え冷えとした木々の影がたゆたう森を抜けて峡谷に踏み入った。 指揮官の佐伯と矢萩たち将校4名がそれぞれ部下10名、オートマトン50体を率いる、数の…

Mov.46 駆り立てる思い(5)

「……どう、なるんだ……」 しわが寄った額に左手を乗せ、ひとりごちる……箸が進まぬ夕食を終え、タオルケットに包まってパイプベッドに横たわるユキトの不安を、ドア前に浮かぶカンシくんが機械的に撮影し続ける。クォンに宛がわれたドーム屋根住居の寝室……四分…

Mov.46 駆り立てる思い(4)

閉め切られ、きりきりした緊張感がよどむ集会所……議長席――黒革の椅子にどっかと座したクォンは、本黒檀のテーブルの左右に仮面じみた顔を並べる韓服姿のファン・ヨンミ、ホン・シギ、イ・ジソンたち、そして末席で断崖をのぞくように卓上を見つめるユン・ハ…

Mov.46 駆り立てる思い(3)

「あれぇ、もうビールが無いなあ~――ほら、ミセっち! 追加だよー!」 座布団を尻に敷き、あぐらをかいた入谷が空き缶を振って騒ぐと、店舗デザインのウインドウ前で腕組みした手の平大の二つ編みアレンジ少女がため息をつく。 『はぁ……あんたら、未青年だよ…

Mov.46 駆り立てる思い(2)

血がにじんだような夕焼け……荒野に伸びる長い影――揺らめく石柱群の間を赤黒く染まった小柄な姿が転がるように駆け、己をすっぽり隠せる陰へつんのめって突っ込む。葉エリー――褐色の肌から噴き出た汗でTシャツを濡らし、その上のカーディガンやガウチョパン…

Mov.46 駆り立てる思い(1)

「これは、ドローン〈レイヴン〉が撮影した映像――このキャンプから直線距離で約10キロほど南西のものだ」 議長席に座る佐伯は自分の前に表示される俯瞰映像――ドーム屋根住居の集まりと空を見上げる韓服姿を目で射、居並んでウインドウを見る部下たちに滑ら…

Mov.45 逃避行(3)

陰りを帯び、妖星がぎらつく西の空……暗さを増す峡谷をATVが徐行し、その後ろを歩くオートマトンが封印の手錠をはめられたユキトと紗季を鎖で引く。のたくり、波打つ小石だらけの道を進んだ一行はやがて開けた盆地に出、地面に影を伸ばすドーム屋根住居の…

Mov.45 逃避行(2)

「斯波ユキト、篠沢・エリサ・紗季っ!」アイドリング音に混じって峡谷に反響する、梶浦の生真面目な声。「抵抗はやめなさい! 投降すれば、悪いようにはしませんっ!」 「いきなりグレネードをぶっ放しておいて、よくもそんなことが言えるなッ!」 「お前た…

Mov.45 逃避行(1)

かすみ、たゆたう陽が西へよろめくはるか下……高さ百数十メートルに及ぶ切り立った崖の狭間に薄ら寒い影が満ち、入り組んだ川さながらに一帯を統べる。その薄暗いラビリンスの底……重い足取りで歩む紗季……斜め後ろのユキト……謎の黒い嵐に助けられ、早1カ月――…

Mov.44 不遜な進化(2)

挨拶したクォンの映像が消えてウインドウが閉じると、青筋立てた北倉がテーブルを両手でバンッと叩く。 「まったく頭に来るヤツだッッ! あの韓国系めッッッ!」 「ロベー、そのテーブルは、マホガニー製でハイパーに高いのよ。バンバン叩かないで」 「あッ…

Mov.44 不遜な進化(1)

――僕たちがルルりんと遺跡を脱出し、ヘブンズ・アイズで事前に見つけていた北西30キロ地点のフェイス・スポットに腰を落ち着けて3週間……佐伯修爾率いるハーモニーに対抗するため、ルルりんキングダムは遺跡南西に新たな拠点を構えたコリア・トンジョクと…

Mov.43 黒い力(4)

夜気を震わす、鳥獣の奇怪な鳴き声――耳を打たれ、まぶたをぴくつかせたシン・リュソンは薄く開いてのしかかる闇をぼんやり見た。どす黒い黒雲の層……悶え、ねじれて引きつったように枝葉を伸ばし、茂らせる木々を飲み込んで流れる泥状の闇……下生えの上で仰向…

Mov.43 黒い力(3)

「何だ、シャルマ少尉」 「そんなヤツ、リーダー自ら手を下す必要はありません。ボクにやらせて下さい。お願いします!」 「ちょっ、ジョアン、あんた、何言ってるの?」 「ボクは、そいつに恥をかかされた。その雪辱を果たしたいんだ」 ジョアンは拘束され…

Mov.43 黒い力(2)

軍事務所に飛び込むやカウンターを乗り越えて夜勤の兵士に殴りかかり――ユキトはコネクトする間を与えずにのして気絶させ、ライトンをつけて奥の階段をダダッと駆け下りた。 「――篠沢っ!」 ブタ鼻からの光が鉄格子越しに留置室の中を照らし、奥に洋式便器が…

Mov.43 黒い力(1)

もだえて壁側に寝返り、ユキトは暗闇で低くあえいだ。カンシくんのカメラを避けてベッドに潜った全身が病巣びょうそうになったように苦しく、脈動するたび鈍く痛む。1カ月を超える探索の疲労に加え、昼間矢萩から受けた拷問のダメージが呪いに加勢してさい…

Mov.42 青い鳥(4)

「――聞かれたことにちゃんと答えなさい!」 いら立つ潤の声が4畳半ほどの取調室に響き、向かい側にうつむいて座るエリーがいっそう体を縮める。向かい合わせた机越しに取り調べる潤――その斜め後ろには佐伯が腕組みをして立ち、峻嶮しゅんけんな顔付きでやり…

Mov.42 青い鳥(3)

まるで、冷たい沼に沈んでいるかのようだった。 掃き出し窓に引かれて乏しい陽を遮るカーテン、呼吸をするほど胸に影が蓄積していくような部屋、ローテーブル越しに鋭く見据える軍服姿の矢萩あすろともう1人の将校――梶浦翔一。自宅の薄暗いリビング――ソファ…

Mov.42 青い鳥(2)

「……それで、どうしてこんな夜更けに僕らを呼び出したのですか? ここは、軍に見張られているんですよ?」 白ローテーブルを挟んで鎌田は北倉と顔を見合わせ、並んだアーチ型窓に引かれた艶めくカーテンの向こうを気にして尻をもぞもぞさせた。羽根柄ソファ…

Mov.42 青い鳥(1)

灰色に煙ってかすみ、ぐちゃぐちゃにゆらめく彼方の赤い星……陰った双眸にぼんやり映し、ユキトは乾いた流動に押されてよろめきながら混沌と流れる地を踏んだ。その左横では紗季がひどくゆがんだ荒れ野と陰鬱な空の狭間を見つめ、ぽっかりと間を空けた後方で…

Mov.41 オーバーロード(3)

「……――っ……!」 ガクッと膝を折り、ユキトはばらけるごとく倒れた。黄昏たそがれた世界がのしかかっているのかと思うほど全身が重く、鈍痛が頭を内部からひび割れさせる。 「――斯波っ!」 駆け寄った紗季の力を借り、ずるずる四肢を動かしてどうにか起き上が…

Mov.41 オーバーロード(2)

亀裂の底で光がはかなげに生じては消え、血に飢えたかのようにうねる黒い荒波が抗う者たちを飲み込みにかかる。それを縁からのぞいていた新田は息が詰まった顔を引いて後ずさり、プロテクターでガードされる背を向けてうつむき、底を凝視したまま凍りついて…

Mov.41 オーバーロード(1)

水面みなもの像のごとく揺らめく、濁った薄曇り……うつろに燃える陽が、赤い星の輝きの方へ、西へ傾く。遺跡を出て、およそ1カ月……石柱が林立する黒砂漠を、奇岩が点在する渓谷を越え、そして今、赤褐色の荒野を踏んで流動の中をひたすら進む新田に紗季、顔…

Mov.40 畜生(2)

「……ぜぇ、はぁ――く……はぁ、はぁ……」 息を切らしてよろめき、キムはそばの大木に右手を突いて汗だくの体を支え、破裂しそうな心臓を静めようと荒い呼吸を繰り返した。いつの間にか辺りを包む薄霧の助けもあって追手の気配は無かったが、一緒に逃げたチュ・ス…

Mov.40 畜生(1)

荒々しく波打ち、逆巻く黒髪――深緑にひらめく潤の白刃が外骨格もろとも左腕を断ち、腹部を斜めに切り裂いて化け物ナナフシ――ア・ギスウにとどめを刺す。鋭く磨かれた瞳をきらめかせ、暗緑色の枝葉の間からのぞく昼下がりの曇天へのぼる光のちり――その周りで…

Mov.39 分裂の始まり(3)

「――くそっ、上等だ! あいつら、全員ぶっ殺してやるッ!」 ストレートウイスキーをグイッとあおったキムがグラスをコースターにガンと置くと、ローテーブルの向こうで横二列に並んで正座しているユンたちがビクッと体を震わせる。抗議のみじめな結果に怒り…

Mov.39 分裂の始まり(2)

「……そっか」 あだっぽい唇を舌打ちでゆがめ、ため息を噴いたルルフは胡坐あぐらから足を投げ出してボフッと仰向けになった。外れた視線を追って動いたコネクトのウインドウがベッドの天蓋てんがいをバックにし、四角い画面に映る鎌田がピンクのキャミソール…

Mov.39 分裂の始まり(1)

「――これは差別だッ! 横暴だァッ!」 濁り、よどんだ黄昏に韓服軍団とこぶしを突き上げ、キム・ジュクは九十九つくも式自動小銃を携帯して運営委員会事務所前にずらりと立つ白い壁――矢萩、潤が率いる警備隊に青筋立てて怒鳴った。だが、総勢15名のコリア…