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REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

蛆、そして蛇

話はそこで終っていた。 わたしは本を閉じて妻を見た。彼女はただ、じっとわたしを見つめていた。闇が忍び込み始めた部屋はどこか異様さを増しており、熱のせいか寒気がして頭が少し朦朧もうろうとしてきた。わたしは一言、怖い話だねと言って本を返すと、妻…

―――――――――――――――――――――――――――――――― 肉が切り裂かれ、血が噴き出す音が聞こえました。サイキが私をかばって剣を受け、崩れていくのが見えました。仰向けに倒れた体に飛び付き、ごぼごぼ血があふれる傷口を両手で押さえて繰り返し名を呼ぶ私を見つめ、サイキは…

地上を忘れようと努めてしばらく経ったある日、いつものように鬼たちと働いていた私のところにメミという名の鬼女が転がり込んで来ました。ぜぇぜぇ息を切らしながら何事か伝えようとする彼女――まだ鬼の言葉を大まかにしか理解できなかった私はサイキを呼ん…

私はその穀物らしきものに手をつけませんでした。得体が知れないうえ、鬼女が触れたものなど汚けがらわしいと思っていましたし、何よりも地上を、あの光に満ちていた世界を僅かでも思い出させるにおいなど嗅ぎたくありませんでした…… しかし、鬼女たちは私の…

残暑の濁った夕暮れ…… 遠く……か細い蝉の鳴き声が聞こえる…… ふと……夢うつつに目を覚ますと、友人の見舞いに出かけていた妻が頭のそばで正座をしていた。白い肌とワンピースが、窓から差し込む黄昏の陽で薄暗い赤に染まっている。マンションの西向き六畳和室…