REBEL∞VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©NaG∀T∴

2017-02-11から1日間の記事一覧

Mov.12 イジン(6)

「――そこまでにしておけ!」 とどろく佐伯の声が、張り詰めた緊張にひびを入れる。道を開ける少年少女の間を毅然きぜんと歩く佐伯は矢萩に横から近付き、アサルトライフルを下ろすように諭さとした。 「――矢萩君、ヤマトオノコは高貴でなければならないと教…

Mov.12 イジン(5)

自チームの波に交じって実戦訓練していたユキトは耳障りな哄笑こうしょうに足を止め、下卑げびたさざ波の源へひそめた眉を向けた。気が散って鈍った攻防の満ち引きを間に40メートル弱離れたそこでは、白ジャケットとベージュのスラックスのあちこちを無残…

Mov.12 イジン(4)

「――この調子だと、いずれ斯波君に追い抜かれてしまうかな」 「そんな……新田さんには、あの力があるじゃないですか」 「あの力?」 「樹海で僕らを助けてくれたときの力です」 「あー、あれね」と思い出し、紗季が新田を見て目を輝かせる。「目が金色になっ…

Mov.12 イジン(3)

くすんだ緑の原を駆けるユキトへ矢が続けざまに放たれ、汗ばんだワイシャツ姿をとらえ損ねて消える。紗季が飛ばす赤い矢じりの矢をやや不格好にかわし、粗削りな急加速でジグザグに距離を縮めて鋼のこぶしをグォッと引き絞った瞬間、ユキトは右上腕に小さな…

Mov.12 イジン(2)

「――どれくらいの繁殖力なのかは分からないが、こうしている間もクモバッタ――テラ・イセクは数を増している。俺たちが生き延びるには、一丸となってあの群れを迎え撃ち、滅ぼさなければならない」 「残り1日半かけて、総力戦の準備を整えるということですね…

Mov.12 イジン(1)

闇が薄れて夜が明け、薄墨色に煙った空が真新しいタオルケットに包まった少年少女たちの上で凪なぎの水面みなものごとく揺らめく。昨夜、各自購入したレジャーシートを焚き火の周りに敷いて横になった彼等は、曇天から漏れるうつろな陽に促されてもぞもぞし…