読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

REBEL∝VECTOR

小説/イラスト/詩/俳句 ©永都由崇

Mov.65 真ヤマトに咲く華

――私、後藤アンジェラは、僭越ながら佐伯軍将の遺志を継ぎ、真ヤマト軍のリーダーに就任させていただく決意を固めました。 私たちは矢萩一派のようなヤマトの奇形をのさばらせたことで多くの人々を苦しめ、心ある同志たちが犠牲になるのを許してしまいました…

Mov.64 劣化(2)

「――ああッ、もうッッ!」 わしづかみにしたクッキーを投げ付け、ルルフは鎌田たちが閉めた扉をにらんで呼吸を荒らげた。 「……あいつら、口答えするなんて……!」 『キャハキャハッ♪』 空中にロココ調デザインの楕円型ミラー――ミラが現れ、くるくる踊りながら…

Mov.64 劣化(1)

「……今日もハイパーにノルマ未達だね」 目の前に表示された総納付額から転じたとげとげしい目――クリスタルテーブルを飛び越え、ローズカラーの絨毯の外に縮こまって立つ鎌田と北倉に突き付けられる。シャンパンゴールドのソファに座して飾り羽が威嚇する肩を…

Mov.63 決闘(2)

「conditionはいいのか?」 「気遣いはいらないよ。全力で来い」 「OK……!」 両袖をまくって腫瘍の腕を出したユキトがこぶしを固めて全身に光を帯びると、胸の前で手の平を合わせて精神集中したジョアンの左右に4体の『巻貝』が殻頂を標的に向け…

Mov.63 決闘(1)

蒼い黎明を席巻する黒雲……その僅かな雲間で輝く赤い星の下、頂が落ちくぼんだ標高約4000メートルの黒い円錐形の山が揺らめき、怒りのような、嘆きのような地鳴りを重く響かせる。その麓でユキトは混沌と流れる礫れきだらけの地面をスニーカーで踏み、ざ…

Mov.62 カタストロフィ(3)

怒涛のごとく吹き流れる空一面の暗雲が、横殴りの雨にめった打たれるヤマト王城と塀、やぐら門が、うめく若者たちが横たわるクレーターだらけの一帯が、底知れぬ淵を沈んでいくかのように陰り、暗い輝きに飲まれる――それがデストロイ・ブーケから放たれたビ…

Mov.62 カタストロフィ(2)

「――そ、そんなッ!」 ウインドウに叫んだユキトは半壊したフロアから離れ、がれきを踏みながら近くの扉に走って脱衣所、そして一面ゴールドのバスルームへ駆け込み、右こぶしで窓ガラスとシャッターをぶち破って大穴を開け、湿った風が暴徒のように吹き込む…

Mov.62 カタストロフィ(1)

――しっ、城の最上階が爆発したッ!―― ――矢萩のアイコンが消えたぞ!―― ――やったのかっ? 先行した斯波たちが?―― 矢萩が集中砲火でちりになる十数分前――押し寄せた同盟軍メンバーは半壊して煙を上げるヤマト王城最上階をやぐら門手前から見上げてどよめき、…

Mov.61 影との再会(4)

「……はぁ、ゼぁ……――うおおッ!」 北東からの強風にあおられて石の縁を踏み外し、崩れた石垣の坂をごろごろ転げ落ちて荒野に投げ出される矢萩―― 「……ぐ……ヂクしょオッ……!」 悪態をついてよろよろ体を起こし、振り返って斜面の上をうかがう醜貌しゅうぼうがお…

二次創作イラスト 2017.5.14

【アイドルマスターシンデレラガールズ】「宮本フレデリカ」イラスト/永都 由崇 [pixiv]

Mov.61 影との再会(3)

「……え? さ、佐伯さん?」 半信半疑のユキトの隣で、言葉を失うジョンナ……矢萩が放ったブラッド・レイ∞インフィニティの光に消え去るのを目撃していては無理もなく、佐伯がユキトの横に立ったところでようやく瞬きをした。 「軍将……」 「佐伯さん……」 ユキ…

Mov.61 影との再会(2)

「あ、ヒャ、ひゃ! 化けモンろクセにヌード見て隙がでじるとはネェ! マジウケるわァ! あひゃハッ、はへは、ひ、ひ、ヒヒ、ヒ、ひッヒ!」 入谷が頭をガクガク振り、体を揺らして哄笑すると、左右の少女たちも狂った笑い声を合わせる。それは悪霊に取り憑…

Mov.61 影との再会(1)

戦端を開いたのは、北東からすさぶ風に踊る歌声―― 次第にかさと濁りを増し、中天によろよろ昇る陽をかき消そうとする雲の下で高慢にきらめくハイパーゴッデス号の高みから勇壮な歌声が色あせた平原に響いてウェーブを起こすと、コンコルディ遺跡を背に陣を張…

Mov.60 落日の兆し

黒御影石の段を一歩、一歩……黒軍服姿の背に大石を負い、ブーツがぬかるみにはまったかのような足取りで横幅がある折返し階段をのろのろ上がる中塚をブラケットライトが冷ややかに照らし、苦みをはらんでうつむいた細面を影で黒ずませる。その顔は5階に近付…

Mov.59 新生(2)

――あらためて謝りに来るんだって?―― ――連れて行くってコネクトがあったんだよ。斯波ユキトから―― ――あっ、来たよ―― コリア・トンジョクメンバーの声が、薄紫の袖を胸で組んで立つクォンの背後で低くなる。ドーム屋根住居群のそばに固まる韓服姿……その頭上で…

俳句 2017年5月7日

俳句 2017年5月7日

Mov.59 新生(1)

午後一で行われた潤の取り調べ終了後――ユキトは書記を務めたエリーと別れ、潤に付き添って同盟軍本部事務所を出た。おぼろな雲越しに差す薄ぼんやりとした陽が調理場と食堂を収めるパイプテントを、コリア・トンジョクのドーム屋根住居群や黄金の大聖堂――ハ…

Mov.58 涙を抱いて(3)

潤が傷を癒し、聖奏学園の制服に着替えるのを待ってユキトが揺らめく戦場に向き直ったとき、すでにルルフの歌はやみ、波立っていた流動も落ち着きを取り戻しつつあった。鮮血色の朝焼けが消えた早朝の曇天下にヤマト軍の黒い軍服は見当たらず、くすんだ輝き…

Mov.58 涙を抱いて(2)

「――来るよッ!」 叫んだ遠山が小脇に抱えたレールガンの砲口を重そうに向ける先――風が荒れる空間のうねりを逆巻かせ、噴流のごとき土煙を立てて爆走する黒いマシンのハンドルから両手を離し、加賀美潤は黒髪と桜花が燃える袖を激しくなびかせながら右翼のユ…

Mov.58 涙を抱いて(1)

布告 ハーモニーの再生を目指す我々同盟のメンバーは、再三に渡る要求を拒んで非人道的行為を続けるコミュニティ『ヤマト』に対して、ここに宣戦を布告します。 元は同じコミュニティに属していた者同士がこのような事態に至ったのは非常に残念ですが、この…

Mov.57 狂える前夜(2)

泡立った泥色の雲がよどみ、揺らめく夜空の下……左腕を上にして腕組みした加賀美潤は荒涼とした野を覆う闇に切れ長の目を細め、落ち着きなく流れを変える不安定な流動と、うなり、うめくような響きとともに吹き乱れる風に長い黒髪を弄ばれていた。鼻から下を…

二次創作イラスト 2017.4.30

【松永涼】「松永涼」イラスト/永都 由崇 [pixiv]

Mov.57 狂える前夜(1)

とぐろを巻き、鎌首をもたげた血みどろのキングコブラ……それが、カニのハサミの形をしたコンコルディ遺跡北部――『可動指』地域にそびえ立つ〈ヤマト王城〉を見た者が身震いとともに連想するイメージだった。 野球場ほどの舗装された敷地を六角形に囲む高さ3…

Mov.56 ハーモニー再生同盟

ハーモニー再生同盟憲章けんしょう 第一条 この同盟は、このゾーンに生きるすべての者たちが互いを尊重し、調和して暮らせる社会を目指すものである。 第二条 この同盟は、志を同じくする者であれば、ルーツ、性別、所属等に関わりなく加盟者になることがで…

二次創作イラスト 2017.4.27

【アイドルマスターシンデレラガールズ】「水木聖來 2017 4・27」イラスト/永都 由崇 [pixiv]

Mov.55 戦場を駆ける振袖

霧雨で煙る平原に雄叫びがとどろき、ずるずる流れる草を泥まみれのノビータイヤがひいて千切り――堰せきを切って連続する銃声、砲声が一帯を破壊のちまた・・・に変貌させる。ヤマト護魂戦線全滅の報をきっかけに加賀美潤率いるヤマト軍総勢20名は流動を駆…

Mov.54 魔王(3)

「――!」 右斜め前方に転じられた目を赤い光がくらまし、ハッとする三人衆の見ている前で胸がはだけた上半身と腰とを消し飛ばそうとした高出力のビームがバリアにぶつかってバアアッッと拡散――とばっちりを食った木々が黒焦げになり、下生えごと焼かれてえぐ…

俳句 2017年4月23日

俳句 2017年4月23日

Mov.54 魔王(2)

暗雲へ稲妻状に伸びる黒ずんだ広葉樹群の間――赤黒い閃光が走って爆発音がとどろき、爆心地付近の木々を瞬時になぎ倒した凶猛な爆風が空間を激しく揺さぶって森を席巻する。鳥獣たちの絶叫がどす黒く濁った空に飛び散り、焼け焦げた樹木の臭いが辺りに立ち込…

Mov.54 魔王(1)

雲の濁流から針のような小雨が降って密生した下生えを打ち、まだらにある池塘ちとうの水面みなもに波紋を描く。雨で煙り、陰気なにおいがじっとり立ち込める湿った草原……後藤アンジェラは赤いサイドポニーテールを左肩に流した黒外套の下で腕組みをして立ち…

Mov.53 夜明けの決意(2)

うっすら開いた目にぼやけたうつつ・・・が映り、だんだんと薄明るい天井がはっきりするにつれて一重まぶたが上がる。微光に誘われて枕の上で頭を傾けると、ぼんやり白んだ掃き出し窓のカーテンが黎明れいめいを知らせていた。眠気の残滓を払ったエリーは掃…

Mov.53 夜明けの決意(1)

カラーフロアの床から離れた足にパッとスニーカーを履いて土間に下り、ドアを開けて外に出たユキトは閉まらないように押さえながら脇にどいた。数秒後、その前を両手でトレイをしっかり持つエリーが通り、日没間も無い蒼い砂漠にドームを描くだいだい色の明…

Mov.52 邂逅

ざらついた流動に突き飛ばされてよろけ、ユキトはガクンと折れた両膝を小石混じりの砂に突っ込んだ。へたり込み、背中を曲げてうなだれた体が、薄ら寒い揺らめきにたゆたう……黒の十字架が引き起こした〈黒の大流動〉に押し流されて1カ月……着たきりのスウェ…

Mov.51 真相が呼ぶ暴走(2)

紗季の胸から爆発して一帯を飲み込み、異次元へ引きずり込まんばかりにうなって荒れ狂う黒い輝き――そびえるルルフキャッスルをグラグラ揺さぶり、天変地異に狼狽するガーディアンたちを散り散りに押し流すそれは、放たれたデストロイ・ブーケのビームと砲弾を…

Mov.51 真相が呼ぶ暴走(1)

とめどなく発射され、空間をジグザグに切り裂きながら無差別に急降下する小型ミサイル群――カーリフトやハイパーゴッデス号に炸裂し、地上に突っ込んでガーディアンたちを吹き飛ばす爆発の乱打――破片を高速で飛び散らせながら咲き乱れる爆炎―― 「――くッ、うう…

Mov.50 赤い死の仮面(3)

かすんだ光がともる密室に重苦しいため息が漏れ、よどんだ空気の陰りが増す……地下の小部屋に放り込まれてから8時間余り……打放しコンクリートの壁に重だるい体をもたれさせ、冷たい床に足を投げ出したユキトは、太ももの上の両手にがっしりはまった封印の手…

Mov.50 赤い死の仮面(2)

いくつもの林に囲まれてそそり立ち、ライトアップされて白く輝く大理石の巨大ピラミッド……星の欠片すら見えない夜空に映えるルルフキャッスルへ、てんでんばらばらに枝を伸ばす木々の間を風のように駆け抜けて接近する影―― 黒装束のクォン・ギュンジ―― ヘッ…

Mov.50 赤い死の仮面(1)

きらびやかな円柱型の密室がスウッと上昇――沈み込む感覚に襲われ、ユキトは重い頭をいっそう垂れた。 (……これさえなければ……) 両手首にはまる封印の手錠から陰鬱な目をのろのろ動かし、自分の左前――コントロールパネル前に立つ北倉のがっちりしたレザーの…

Mov.49 笑う悪魔(3)

「――おらおらァ! こんなもんかよ、軍将様ァッ!」 「――はあッッ!」 鋭い突きをかわして斬り結んだ佐伯は、押しやろうとする矢萩の力を利用して後方に跳び――下腹部から燃え上がる気合で刃を輝かせ、生み出した9頭の猛虎を斬撃とともにグワッッと解き放った…

自ritsu

これは俺の骨 これは俺の血 これは俺の肉 これは俺の鼓動 これは俺の呼吸 これは俺のまなざし これは俺の叫び これは俺の魂 何一つ無い 売り渡すものなど

俳句 2017年4月2日

俳句 2017年4月2日

(8)

雪に点々と印される血の跡が、瞬く間に白く消されていく。いくらか弱まったとはいえ、まだ強く吹き荒ぶ雪の中をシグルは血まみれの肉体を引きずり、額の傷から流れる血で視界を赤く染められながら、這うように一歩一歩山をのぼっていた。 その頭には、もはや…

(7)

(――!) シグルは足を止めた。視線の先に影があった。口から蒸気を噴き出して急斜面に立つ、頭から角を生やした黒い獣―― 「シグル、か……!」 殺気みなぎる声が飛び、猛吹雪からオージュが現れる。それに続いてフルーたちも姿を現し、シグルは左右に広がった…

(6)

闇に埋もれた針葉樹林を揺さぶって、夜が雪とともに飛んでいく。巨躯が冷え切って重くなったシグルの頭上で雪雲の層が黒から蒼に変わり始め、寝ずの番をする見張り役たちのあくびが風のうなりに混じって聞こえた。 やがて未明を迎えた林の中央で、シカたちが…

(5)

吹雪で濁った麓――分厚いねずみ色の雲のはるか下、林が少し開けた場所で開かれた集会では、長老、その右隣に鼻高々と立つオージュ、卑しげな笑みをたたえたフルーを始めとする雄たちに囲まれたシグルが、ぶつかるとげとげしい雪から目を伏せ、口からかすれた…

(4)

未明、シグルは硬い雪を掘り、秋のうちに土の下に蓄えておいた木の実で軽く腹ごしらえを済ませると、仲間に気付かれないように林を抜け出して吹雪の山をのぼった。 ――あの子オオカミを、殺す―― 痛みが残る右後ろ足を心持ち引きずり、拒むように枝を伸ばす低…

(3)

――あのとき、巣穴からふらふら出てきたのは、見るからに弱って足取りもおぼつかない子オオカミだった。まだ生後数十日くらい――野ウサギより一回り大きく、薄灰色の柔らかな毛並みをした幼子は、どうやら病んだ熱に浮かされているらしくぼうっとしていたが、…

(2)

「そうか……よくやったな」 老シカは少し離れて前に立つシグルをしわがれ声でねぎらい、吹き付ける雪に顔のしわを深めた。風雪になぶられる針葉樹林の少し開けた場所で、くすんだ毛並みの老シカを要かなめに十数頭の雄シカがシグルを囲み、オオカミ殺しを始め…

(1)

逆稲妻形の角を伝った血が風に飛び、かき乱された雪の上に落ちる。引き裂くような吹雪がすべてを灰色に煙らせ、そそり立つ針葉樹と落葉した低木の群れを侵した森で焼き切れそうな息を吐く雌オオカミは、角の先を赤く汚して自分と対峙する雄シカをかすんだ双…

話はそこで終っていた。 わたしは本を閉じて妻を見た。彼女はただ、じっとわたしを見つめていた。闇が忍び込み始めた部屋はどこか異様さを増しており、熱のせいか寒気がして頭が少し朦朧もうろうとしてきた。わたしは一言、怖い話だねと言って本を返すと、妻…